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これからインプラント治療を受ける患者さんへ その16.

最近、他の歯科医院でインプラント治療を勧められて、私の診療所へとお越しになられる患者さんが多いです。

私にしてみれば、何故にその歯科医院でインプラント治療をお受けにならないのか不思議でした。

この様な方が続いたので、いくら鈍い方の私でさえも、あることに気づきました。

初めからインプラント治療ありきでの歯科医の勧めに対して、患者さんは心の内でスッキリしていないのです。

インプラント治療はあくまでも、数ある治療の中の1つでしかありません。

幾つかの治療の中からの、特に秀でた治療がインプラント治療であると決めつけてはなりません。

一昨日、お越しになられた患者さんは、私の診療所にとっては、とても若い30歳の女性でした。
レントゲン写真やCT所見を診れば、インプラント治療としては簡単な症例でした。

しかしながら、噛み合わせを拝見してみれば、???考える処が多々ありました。

私の頭の中は、昨日の休日も、その患者さんの治療方法をどうするか!で一杯になっています。

インプラントか?ブリッジか?

私は将棋が好きで、暇な時には若い医局の先生を相手に打ちますが、
その時と同じように、今も頭の中で、その症例と将棋を指しています。

私が症例と向かい合う時に、特に重要視することは、
①長持ちすること
②清掃性の良いこと
③将来、何か問題が発生したら、最小限の治療で済む設計であること
④見映えが良く、発音しやすいこと

歯の治療だからといって、簡単に考えないで下さい。

インプラント治療を受けるに当たって その15.

1996年と言えば、今から18年も前の事になりますが、当時はノーベル.ファルマ社と云う社名であった
現在のノーベル.バイオケア社と伴に、同社が販売するブローネマルク.システム.インプラントの歯科医師向けのトレーニング講習を始めさせて頂いた当時は、
メーカーの側も教える側の私も、これ程までにインプラントが普及するとは思いもよらない事でした。

私の担当する講習会は12日間の行程でしたが、たった此れだけの日数でインプラント治療が修得される筈もありませんが、
それでも最低はこれだけは押さえておかなければならない必須の要件は満たした上で、
講習を終えられた先生方に対して、講習を受けてからが勉強の始まりですよと、お伝えしておりました。

大勢の先生方と御一緒させて頂いて、内心では、この先生は手が粗いなと正直、感じる機会も多々ありました。

インプラントだけが特別な治療ではありません。

虫歯の治療が丁寧な先生は、インプラント治療も丁寧にされている傾向があります。

インプラント治療は、高額な治療です。

ですから、商売熱心?な先生は、インプラント希望患者さんの獲得に熱心ですが、
熱心な気持ちと治療成績は比例するとは言えません。

さらには、最近のインターネットの普及によって、ホームページ上では誰もが名医?を自称出来るようになりました。

ついこの前まで、新聞上やテレビの報道によって騒がれていた有名ホテルやデパートの食品偽装問題と似たり寄ったりの風潮が
歯科インプラントにも見られます。

治療を受ける患者さんの側も、費用の安い高いや、学会歴などの見せる処だけで判断されません様にと願います。

インプラント治療は、上手く、巧く使うと、本当に有益な治療です。

治療を受けられた患者さんが、インプラント治療によってより幸福になって頂きたいと願ってやみません。

部分入れ歯 VS インプラント その1.

新患でお越しになられる患者さんから、インプラント治療の費用に纏わる話をお聞きする際に戸惑う事があります。

殆どの患者さんは、他の医院に於いて凡そ次の様な説明をお受けになられておられます。

1.部分入れ歯は、就寝時には取り外すこと。
2.部分入れ歯は、食べ物の種類によっては食べ物がハサカルこと。
3.入れ歯は、期間が経過すると伴に骨が痩せていくので、何時かは入れ歯を作り直す必要が出てくること。
4.入れ歯は、インプラントよりも断然、費用的に安いこと。
5.インプラントは、取り外す必要がない。
6.インプラントは何でも噛める。
7.インプラントは一生もの。

確かにインプラントの方が入れ歯よりも確りと噛めます。
また、取り外す必要はありません。

但し、一生もの!と云う説明には疑問を持つべきです。
そんな時に、逆に問うてみて下さい。

ー 先生のインプラント治療歴は何年ですか? ー

長くて10年そこそこでしょう。

私のインプラント治療歴は26年になりましたが、一生モツなどとオオボラ吹ける程の強心臓は持っていません。

下手な入れ歯を入れれば、骨は痩せていきます。
あくまでも下手な入れ歯です。
キチンと考えて造られた入れ歯は長く使用できますし、修理も出来ます。

精密で、先の先まで考えて造られた入れ歯は、費用的にも高額です。

巷の歯科医の、入れ歯か?インプラントか?の云々は、私にはどうも胡散臭い感じがしてなりません。

インプラントの方へと方へと導いている様にしか感じられません。

あくまでも症例によって治療方法を選択するべきではないでしょうか?

新潟にて その3.

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私にとって縁の深い新潟は、愚息が新潟明訓高校へと通う様になって益々をもって縁が深くなりました。  

愚息と一番末の娘は、歳が13も離れているせいか、愚息もこの妹にだけは、されるがままの可愛がりようです。

血とは本当に恐ろしいもの。

卵の黄身が嫌いで、白身しか食せぬのも同じ。
最近では顔までが、兄妹でそっくりとなりました。

最近では余り新潟へも連れて行ってはおりませんが、この娘、私の喜ぶ壷をよく心得ています。

ー マナちゃんは、大きくなったら歯の先生になる!新潟の歯の学校に行く! ー

私の財布の口が全開となるのは言うまでもありません。

愚息にも、その様な時期が遥か昔にありました。

親とは愚かな者です。
その時の光景が在るからこそ、子供のために稲穂の様に頭は下げる、欲しいものを我慢して子供に贈るが出来るのです。

私の通う日本歯科大学は東京都のど真ん中に在るにも係わらず、ワザワザ新潟の分校に通ってくる学生も居ます。

親元を離れて此の雪国へ、歯学を学びに来られる若者に対して、応援したくなるのは私も人の親たる証しかもしれません。

新潟にて その2.

大学の中では、私の歳も上から数えた方が早い様になりました。

学内を歩いていると

「ああ先生!お越しですか!」

と、若い先生方からお声を掛けて頂いて、それでは、チョコッとお茶でもどうかね?と相成って
学内の喫茶のアングルで、つい相談噺に華が咲くと云う始末で長引いての機会が多い昨今です。

私の様な、ヤンチャ坊主が其のまま大人になったと子供等からもその様に云われている未熟者が、
他人の相談等にのれる筈も無いことは当の本人が一番よく判っていることです。

私はハウ.トゥ本や自己啓発‥‥に関わる本やセミナー等には全く興味がありません。
況してや、処世訓めいた話や哲学めいた話にもまるっきし関心がいきません。

むしろ、そのような話をされる人の顔を、どの面下げて?とジロリと見上げてしまいます。

ですから、私はただ黙ってお話を最後まで聴いてさしあげるのが精一杯なのですが、
必ず申し上げますのは、
仕事の悩みは仕事で、
家庭の悩みは家庭で
‥‥悩みの原因には、その原因にぶつかるのみ。

その程度の事しか申し上げられませんし、又それが真実だと思っています。

新潟にて その1.

IMG00265日本歯科大学の二つ目の歯学部である新潟生命歯学部があります新潟市へと通う様になって数年が経過しました。

本校のある東京の靖国神社付近よりも私は、此の地新潟が好きです。

と云うのは、新潟には未だ、昭和の匂いがするからです。

文明の利器と情報が反乱する日本の都を私は好きになれません。

対して、此の裏日本の雪国に私は、文化の匂いを感じます。

早朝、大学へと向かう前に小時間、私は自宅付近の萬代橋の周囲の散策を楽しみにしています。

向こう岸のタワービルは此の街の佇まいにはそぐいませんが、それでも此の街のもうひとつの名前、柳都の由来である柳の姿と重なれば、
それは其れで、様になる、全てを受け溶けさせる魅力が、この街にはあるのです。

私の明訓詣で

私が歳をとったからでしょうか?
最近の若い男を観て、大人しく感じてしまいます。

母校の学生諸君の優等生振りにも、戸惑ってしまいます。
余りにも礼儀正しいので、倅ぐらいの年端も往かぬ学生諸君に対して此方もつい、丁寧語を使わねばならないと姿勢を正してしまいがちになってしまいます。

先日、倅の通う新潟明訓高校へ出向いて行きました。

私の若い時分には、市内のど真ん中に在った此の越後の名門私学も、今では郊外の広いキャンパスへと移転し、
田園の稲面に映る校舎は誠に美しいものす。

この私の明訓詣では、1年の中の何度も繰り返し行事であり、それは進路相談のための親子面談の為ではありません。

倅は所謂、ヤンチャ坊主の中のヤンチャ坊主です。

倅を通じて世間様に頭を下げる事、しばしば。

私の頭は、明訓高校を取り囲む稲穂の様にならざるを得ない状態となり、
それは1年の四季を通じてのものとなり、年一度の稲穂を羨む心持ちになる事、これもしばしばであります。

倅の事で頭は下げるのは、今に始まった事ではありませんが、下げながらつくずく感じますのは、
嗚呼、ヤッパリ倅を此の学校に託して良かったと云う私の選択の正しさ!です。

越後人の懐の広さと深さを実感します。

今の世では、愚息の中の愚息の見本の様な倅でありますが、必ず父と同様に、此の越後の地が第2の故郷と感じる様になるでしょう。

頭を下げる父をものともせず、愚息の表情は日毎に穏やかに育っているのを観て、
情けない気持ちと安堵の心が交錯する複雑な新境地の私です。

春の北陸道

毎月、何年も通い続けている新潟へは、決まって北陸道を走る私です。

他のルートも在るのですが、時代劇ファンの私としては北陸道沿線の地名を記す看板を傍目に通りすぎる時、
戦国時代の武士の名と物語が頭の中を過り、とてつもなく心の高揚を覚えるのを好んで
ついこの道を選んでしまうのです。

高槻市辺りで高山右近を、天王山トンネルをすぐる時から山崎付近で明智光秀を、山城で時代はズーと下がって内蔵助。
叡山を左手に仰いで琵琶湖が視界に入った辺りから滋賀、福井、金沢、富山そして越後の春日山のトンネルを走り抜けるまで
歴史の主人公に事欠かない絶好の気色恵まれたる北陸道です。

車中、私は音楽を聴きません。

高松市から新潟市までの片道880キロメートルに及ぶ行程に、他人からは退屈で無いのかしら?と
問われる事しばしばですが、気色を視界に

ー 嗚呼この山は、あの大木は、あの時代のあの事件を目撃していたに違いない! ー

等と、空想しているうちに車は越後平野に入ってしまうのが常となりました。

なん十回も走り続けていても飽きさせない魅力が、この北陸道にはあります。

弥彦の山の姿を探し、嗚呼帰ってきたと心踊り、信濃川に懸かる萬代橋の美しさに安堵するのも何時もの通り。

暖かくじゅうにぶんの湿気を含んだ大気が、大陸からのゆったりとした流れに動く様を身体で感じます。

スケール大きい新潟。

私はこの地に立って、今を生きているを感謝します。

桜ふたたび

今日の診療が終わったら、一路新潟を目指して車を夜通し走らせます。

夜が明けるのは、恐らく越中境あたりでしょう。

患者さん達からは、

ー 先生、道中気を付けて!疲れないように!もう若くないのだから無理しないように! ー

と、口々に声をかけて下さいます。
が、私の患者さんの平均年齢は68歳です!
ありがたい気持ちになりながら、心の中では私の方が患者さんへ逆のお声がけをしています。

毎月、新潟へ通うようになって数年が経過しました。

私は、この越後の地を第2の故郷だと思っています。
ですから、私にとっての新潟行きは、私にとっては大切な充電時間なのです。

私は心から神様や仏様を信じています。
それは日々、人体の神秘に触れているからだと思います。

ですから、越後の大地の、大信濃の水の、連峰の山の、大陸へと続く大海の、柳都の大気の
それぞれに宿る神様が、私を護って下さっていると信じています。

新潟で確りとエネルギーを養い得るので、私は良い仕事が出来るのだと信じています。

この季節、萬代橋の袂のやすらぎ堤の桜は満開です。

桜に接し私は、この大きな太い木の幹に両に掌をあてて、木からの生命の気を確りと吸収する事を楽しみにしています。

四国の高松に暮らす私にとっては、桜の満開に触れる春を二度も感じる幸せを心からありがたいと思って感謝しています。

当医院にこれから受診される患者さんへ その5.

私の診療所の入り口のドアの脇に、小さな看板があります。

【Hisato saegusa.D.D.s.,ph.D.】

大きな大きな看板に、これでもか!とばかりに、いったい全体、何が専門なのか?解らない程の沢山の標榜科目を
書き列べている歯科医にだけは成りたくないと思っておりました。

看板が電光掲示板の様に光輝く処に美味しい店は無いと、誰でも知っていることなので、
私は自分の仕事場の看板は、出来るだけ目立たない様にひっそりとを心がけています。

この建物の中に、私の仕事場があるとだけ判って下されば良いと云う意味の看板です。

判りにくいと、しばしば言われます。

でも、仕事の中味は確りと自己主張しています。
私の仕事は、歯を通じての表現で良いのです。

私は哲学者でも、人格者でも、コメンテイターでもありません。

私は現役の歯のプロフェショナルです。

歯の事だけしか私には判りません。
でも、歯の悩みだけは真剣に、共に分かち合いたいと思います。

私の診療所は【本当に困った時に思い出して下さい】