日別アーカイブ: 2016年3月1日

禁煙できない言い訳

オールセラミック修復の歯型を採っていました。

歯の型を私は、歯科衛生士に採らせることは無論、ありません。

歯科衛生士の業務は、患者さんの口腔衛生に関わることであり、

歯の型を採ることではありませんから。

歯の型は精密に行わなければ、精度の良い技工物は出来ません。

歯と歯茎の間の溝、ここに炎症が起きると歯周ポケットが出来ます。

この溝は凡そ1ミリの深さで安定するように、

予め、手当てを施しています。

この辺りの配慮は、歯科保存学的な立ち位置からのモノです。

健康な歯茎に対して、初めてクラウンの作製のための歯型採りが行えるのです。

この歯茎と歯の間の浅い溝に、細そーい糸を

注意深く、挿入します。

これにより、溝からの浸出液を透いとり、

歯型材が液で滲まないよう、

乾燥下でシャープな再現性が得られるのです。

序でに、クラウンの被せる境目を明示し、

削った歯の境目にヤスリでスーっと、

クラウンと歯の境界がキチンと封鎖出来るよう手当てを施せます。

で、

削った歯のデザインを最終チェックし、

最後の手直しを行います。

ここから、歯の型を採ります。

私はシリコン剤以外は使いません。

このシリコン剤も、症例や季節によって変えます。

これは製麺時に、季節によって塩加減を変えるのと同じです。

歯型材が固まる時間は、タイマーにて一定にします。

実験と同じで、材料を使う手順には、

適当と云う勘は、無用の産物です。

あくまでも一定条件と云う環境が大切です。

固まるまでの間、私自身が歯型を採る器を

口腔内で保持します。

アシスタントに交替することはありません。

支えた指の力加減で、歯の型は変型しますので。

固まったら、スーと、器を口腔から取り出して、

顕微鏡にて、出来具合を確認します。

よし!

と、納得出来なければ、即座にもう一度やり直しです。

この様な時に、躊躇は要りません。

ダメなモノはダメです。

申し訳ないのは、

完璧でない手順で、治療を先に進める事です。

持つべきプライド、

持ってはならないプライドが在ります。

オールセラミック修復の素材も沢山、在ります。

私が、どの素材を選択するか決めています。

この症例には、どの素材が適切であるかは、

専門家である、実際に治療した私が一番良く知っているからです。

これが私の歯の型を採る時の流れです。

終われば、眼が眩みます。

で、院長室にて、

ストレス解消の一服と云う訳です。

これが禁煙出来ない私の言い訳になっています。

他流試合を禁ず

【他流試合を禁ずる】

時代劇では良く観られる台詞です。

何となく観ていたのですが、

最近、この先人の考え方が判るようになりました。

流儀なり流派の違いを競いあう事の無意味さが判るようになりました。

少年時代にテレビで、

元ボクシングのヘビー級チャンピオンであったモハメド.アリ選手と

プロレスラーのアントニオ猪木の対戦を観、

唖然とガッカリした記憶が蘇ります。

所謂、土俵の違いと云うんでしょうか?

昔の人は上手い台詞を考えたモンです。

この違いに接点を求めることは【野暮】であると。

意地や情けも在ろうかと思っていた私は

随分と気苦労やストレスに曝されました。

昨夜、何時ものように

時代劇を眺めながらの歯の彫刻を、

歯を彫刻しながらの時代劇を観、

【十手に懸ける命】と題する番組に、

感じる処、大いに在ったのです。

たかが十手。

其れでも十手。

私にとっての歯科が、其に該当します。

何かに命を懸けるとは、

大袈裟にお感じになられるかもしれません。

が、昔人間の私にとっては、

これはとても重要なんです。

独立独歩の精神

私の母校である日本歯科大学は、

所謂、私塾です。

明治40年に、中原市五郎先生が私財を投じて創立してから

今日に至るまで、

国の財政的補助を全く受けず、

独自で運営されている唯一無二の私立校です。

建学の精神は【独立独歩】。

私が、此処で学んだからでしょうか?

私の生きざまの本線は、

正に【独立独歩】に在ります。

 

プロフェッション

日本歯科大学の第1学年の学生に対する

専門職としての自覚を促すカリキュラムとして

【プロフェッション】という科目が在ります。

今年からは、後期授業から前期日程へと変更され、

私の担当は4月後半となった模様です。

今年で8年目を迎えます。

凡そ2時間程度、

私が日本歯科大学の門を叩いてからの学生時代から

歯科医となって大学院へと入学してから

その後、社会へと出でて現在に至る私の歯科医としての半生を、

と、

毎日の私の暮らし様を、

実際の私の治療 症例などを交えながら、

講義と云うよりは【漫談】しているのですが。

笑いあり、

輝く瞳。

2時間程度、学生の気持ちを逸らさず、

【その気】にさせる手立てに、

後で、ぐったりする程にエネルギーを消費します。

何故に其れほど迄と、

お想いかもしれません。

【プロフェッション】とは、

俺がヤらねば誰がヤル!に尽きると信じて疑っていません。

幕末の志士として四国の【坂本竜馬】が名高いです。

彼ら志士たちは、

当時の立場で在れば政治事はおろか、

天下国家の問題に口を出せる立場ではありませんでした。

志半ばにて、斬られ、矢を尽き、

命を落とし、

が、

彼らの大志は、

バトンのように引き継がれ、

今日の近代日本となった訳です。

私は、しがない市井の開業歯科医でしかありません。

政事は解りません。

が、

成りたくて、成りたくて、

歯科医にさせて頂き、

大勢の方々のお蔭で今日を迎えています。

こんな私で良ければ、

お役に経つと請われれば、

私は何でもする積もりです。

私ら専門職に在る人間は、

独立独歩の精神で、

日々、技術向上のための努力するのは

自分自身のためであり、

其れは勝手な自己都合でも在ります。

汗を流して、

苦労するのは当たり前だと思っています。

で、

その生きようの中で、

【その気】にさせる技量を駆使し、

最前線にて、歯科医療に携わる医人教育の重要性を

今、私は認識するのです。