日別アーカイブ: 2017年1月19日

骨との会話

無事に手術を終える事が出来ました。

スーパー難症例でした。

粘膜を開くと、

骨がビッシリとインプラントを包みこんでいました。

解剖学的に危ない症例でした。

骨にも【癖】があることを、

インプラントを植え込む前に

気づいていました。

3ヶ月前に手当てした骨は、

私を嘲笑うような表情をしていました。

その際に私は骨に頭を垂れて、

私の手当てを受け入れて欲しいと

お願いしました。

骨と会話する等と、

とうとう頭が狂ったと、

お感じになられるかもしれません。

宮大工の棟梁が、

森の木と会話するという話しを

聞いたことがありました。

私は判るように思います。

本当にありがとう、ありがとうと、

骨にお礼を云う私に二心はありません。

患者さんへも、

【越乃雪】も渡す事が出来ました。

小さな小さな和三盆の塊ですが、

同じ素材でも、

京の雅な味わいではなく、

越後の国ならではの【個性】に、

私は舌の上に暖かみを感じるのです。

内科医をする患者さんですが、

帰宅する車中にて、

甘い味わいに、

痛みと手術の恐怖から

解放して欲しいと願うのです。

次の患者さんも、

また骨と会話しようと

楽しみにしています。

歯のキチガイと言われても構いません。

私は同じ歯科医師からの評価のために

仕事をしている訳ではありません。

私の仕事は、

歯の番人に過ぎませんので。

責めんでくんなせぃ

患者さんからの頂き物の機会も多く、

本当にありがたいと、

感謝して過ごしています。

今日の午後からの手術は、

徳島県からの女医さんです。

常々、

盆暮れに、

先生の思案が伝わる心暖まる頂き物に、

とてもとても嬉しく頂いて来ました。

症例としては、

スーパー難症例である先生を前に、

私は緊張の連続であり、

本当に多くの事柄を勉強させて頂きました。

手術の後は、

患者さんの側も疲労が放散します。

お食事する気持ちにも、

直ぐにはならないでしょう。

丁寧な手術に徹するのは当たり前です。

が、

他にも何かして差し上げたいと思いました。

手術の後、

ご自身の運転で帰宅されるとの事。

私の好きな新潟県には、

日本三大銘菓の1つが在ります。

【越乃雪】です。

DSC_0361

この菓子の素材は阿波の国、徳島県からの和三盆です。

これも何かの縁と思い、

新潟から送って用意したのです。

歯医者が患者さんに菓子などと、

でも、

美味しいモノを食べる幸せを

私が大切に感じていますので、

その辺は、

私を責めんでくんなせぃ。

 

何故わかるン?

今日も新しい入れ歯を

掌の上から

患者さんに差し出しました。

一通りの調整が終わって、

ー  先生はインプラントの先生なのに、

何故、私の言いたい事がわかるン?ー

と。

さぁ?どうしてでしょうかね?

歯や歯茎がモノ言いますから。

と、お応えする私。

ー   もう今まで他では言っても言っても解ってくれなくて、

で、

最後はコッチが根負けしてたんです   ー

私らの業界に【生涯研修】という言葉が在ります。

思うに、

これは学会や研修会に参加する事ではありません。

無論、それはそれで刺激になるでしょうから

大切な生涯研修の極々一部でしょう。

私の生涯研修とは、

普遍な日常の過ごし方だと考えています。

繊細な眼で、

謙虚な心で、

感謝の気持ちで、

丁寧な丁寧な手当てに終始する。

そこから学ぶ処が大きいのです。

治療から得た結果から、

工夫に工夫を重ねて、

より丁寧な方法を探す事。

仕事の合間には、

手先の鍛錬と併せて、

手先の手当てに励み、

眼と脳髄は、

海外からの研究論文に向ける事。

他人の臨床報告には意識して眼を反らす事。

それが華麗な治療に見えても、

10000に1つの成功からしれませんし、

その10年先の姿は見えませんから。

古典的な治療の予後の方が、

最新治療よりも宝の山で在ることに、

気づいて欲しいのです。

その様な基礎体力の強化の上で、

患者さんの口の中に、

勉強の問と答えが、

ミッシリ詰まっている事に、

早く早く気づいて欲しいのです。

若い歯科医師の先生方が、

大勢、私の診療所を訪ねて下さいます。

どうぞ、

生涯研修について、

私らの身近な処が、

生涯研修そのものである事に、

気づいて欲しいのです。

決めたこと

瀬戸内海に浮かぶ小豆島に

尾崎放哉の住んだ庵と墓が在ります。

私はこの場所が好きです。

【咳をしても独り】

【茶碗が無いから両の掌で掬う?】

?の句は正確ではないかもしれません。

尾崎放哉の代表作だそうです。

文学を熟知しない私でさえ、

これらの句から、

グッと来る迫力に圧倒されます。

孤独感の冷たさと

人との繋がりからの暖かみの

極端な心境を一瞬に座布団のなかに

仕舞いこんだ技に、

あぁコレがプロの作品だと感心します。

庵の周囲を無縁仏が取り囲んでいる佇まい。

時々、

赤い小さな前掛けを持って、

色褪せた無縁仏の前掛けを交換に行くのが

私の年中行事となりました。

18の歳からです。

見馴れた風景ですが、

歳を経る毎に、

感じ方が変わってきた様な気がします。

仏様の前の石段に腰をおろして、

煙草の煙の向こう側の連なる石柱に、

日常を語りかける自分を可笑しく思います。

石柱の人の生きた当時の名前も姿見も

私は知りません。

が、

何千と連なる仏様に、

私は親近感を感じて何十年も過ごして来ました。

人生の節目節目に、

掌を合わせて、

お願いしたり、

お礼を伝えたり、

近況の報告をしたり。

血こそ繋がりはありませんが、

私にとっては、

人生の共同同伴者で在ったことに間違いありません。

だから、

私は歯科の仕事を誠実に全うしたいと、

決めているのです。

 

人間味

私は毎日、歯の問題を抱える患者さんと接しています。

ご本人は何気なく仰られているのでしょうが、

頻繁に耳にして苦笑いさせられる【決まり文句】が在ります。

歯医者は嫌い!

そんな時に、

私も歯医者なんですが、そんなに嫌わないで下さいよ。

歯科医師なら、みんなが同じ経験された事でしょう。

そんな時に私は思うんです。

それ以上に、

私になら託しても恐くないと、

患者さんに絶対的な安定感ある歯科医師で在ろうと。

治療技術の向上、知識の更なる習得は勿論です。

それが大前提の上で、

患者さんの全てを包み込む

大きな大きな羽を持つ親鳥のようになりたいと思います。

いつもニコニコして、

明るい【気】を放散しましょうと、

私の身体は小柄ですが、

シッカリと根っこを地面に張った根性を、

瞳の中には燃える情熱の火を灯し続けていようと。

診療室のドアを開けて、

患者さんにご挨拶する寸前に、

両の掌で、

頬をパシッパシッと、

自ら叩いて【カツ】を入れて、

三枝尚登から歯医者へと、

切り替えています。

私は歯医者で在り続けたいと思います。

私は人情豊かな男で在りたいと思います。

やせ我慢の連続です。

それでも私が望んで選んだ仕事ですから。