日別アーカイブ: 2017年3月13日

血と肉

6年前の今頃の私は、

エベレストの山頂からスキーで滑走する心持ちで、

日本海側から太平洋側を大きく遮る雪の連邦のなかの

雪と氷だけに包まれた小径を、

ひたすら仙台目指して、

車のハンドルに掴まっていたと云う表現が

適切だと思う状況下に在りました。

国道、県道、高速道路が当たり前という毎日の普遍が、

一挙に崩れ落ちた瞬間でした。

道なき処を、

ひたすら進むと云う状況の異常さも、

恐怖を通り越して、

無心で進むと云う経験を味わいました。

ただただ、息子の名前を繰り返して繰り返して、

それだけで当地へと向かった記憶は未だに鮮明です。

今日も、

時計の針を眺める度に、

胸が傷むのです。

このような想いを、

毎年この季節を迎える度に味わい続けるのでしょう。

あの日から、

私は完全に変わったと自覚しています。

歯の仕事に一生を捧げることを、

単に口からの台詞ではなく、

私自身の血と肉になったと感じたのです。

幸せな男

先週末は仕事終わりの直ぐに、

車のハンドルを握って阪神方面へと出向いていました。

瀬戸内海に面した幾つかの県庁所在地のなかで、

街と瀬戸内の光景が最もマッチし、

美しい情景在るのが高松市だと、

私は車窓からの眺める度に、

その様に感じるのです。

世間では休日を楽しんでいる様相を余所に、

相変わらず私は、

昨日も朝から夜まで、

せわしなく動き廻っていたのです。

どのような些細な事象にも、

すべて歯へと結び付けて考へ、

歯の治療に役にたつ様にと、

そんな身構えで、

過ごす様になって随分と経ちました。

自然科学の分野が幾ら進歩したと云えども、

未だに解っていないメカニズムの方が多いのが現実です。

歯についても、

不思議で不思議でタマラナイ事の方が多いのが

現在でも私の本音です。

歯の魅力に取り憑かれたのですよ。

私は歯医者になって良かったと感謝しています。

せわしなく動く私でさえも、

海岸通りから磯上通りへと歩いていた、

ふとした瞬間、

ハーバーからの春の風を頬に受け、

生きている事を実感したのです。

歯の仕事で生きて、

歯の仕事で生涯を楽しむ。

私ほどの幸せな男は、

そうざらには居らんでしょう。