月別アーカイブ: 2017年10月

師と弟子

内藤先生からお電話を頂戴した序でに、

いつものように又、

師にお願いしたのです。

師から届いた先生の診療着の一部を、

早速、

私なりにアレンジしてオーダーしたのですが、

師の診療着は、

謂わば医師たる者の姿そのものです。

特に師の診療着を眠らせておく訳にはいきません。

で、

私の診察室の、

私、

そして患者さんから、

一番観えるアングルが、

この写真です。

正面の壁に掲げられた額縁の中の写真は師の姿です。

カウンターの上の飾りは、

【月の石】です。

本物ですよ!

夜、

夜空に輝く月と星を仰ぐじゃないですか?

遠い宇宙を感じます。

あぁ、私も月や星のような師のようになりたいと、

若い時分から今日まで、

ジャンプしています。

先生の診療着は、

その真横に設置させて頂きました。

私は診療の度に、

目線を上げると、

この光景が視線に入ります。

で、

いつも師に監視されているような気になるのです。

この判断が正しいのか?

次に手当てに進む状況に歯肉は準備できているのか?

手当てのステップ、ステップ毎に、

私は視線をもたげます。

そのようになか、

師のお写真は、

丁度、先生が今の私の年代の頃に頂いたモノです。

先生は73歳ですので、

恐る恐る先生に申し上げたのです。

先生、写真を下さい。

今のを。

いささか現在とはチョト。

師が曰く。

そりゃそうだ。頭も随分と薄くなったしな!

 

 

若い方の患者さんの多いことに

最近、

若い方、

具体的には30代の、

以前の私の診療所へお越しになられる患者さんは

まぁ50代から60代の方々が中心でした。

ですから、

今、

海外にて暮らす一番上の娘も

既に30を前にしていますので、

謂わば、

娘のような年頃の患者さんが増えたことに

私は戸惑っているのです。

悲しいんです。

だって、

その年齢でインプラントを望んで、

私の診療所へお越しになられるのですから。

その年齢で、

歯を抜かれた!

歯を失った!

歯を抜くと言われた!

そういうことに悲しいんです。

若い方ですから、

綺麗になりたい!

そういう想いが強いのは当たり前です。

それはよく判ります。

審美歯科治療を受けたいと思う気持ちを

私は否定しません。

が、

若い方ですから、

相手を選ぶ眼はどうなんでしょう?

キャンペーンを打つ医療機関に

医師たる者の心の誓いである【ヒポクラテスの誓い】、

医師たる者の責務が在るとは思いません。

治療のご費用に対するご心配も

私にも理解できます。

ただ、

安物買いの銭失いと云うことわざが在りますが、

歯を失い、

結局は費用も高くつく。

そんな馬鹿なことだけは経験して欲しくはありません。

上目だけの観てくれだけ、

上手いコマーシャルトークで、

患者さんをお客さんとしか考えていない医療倫理の欠如。

直ぐに、

簡単に、

精密治療が、

長持ちする治療が、

出来る筈などありません。

私ら医療人はタレントやセレブではありません。

歯の専門家。

人の大切な身体を与る身です。

派手さなど不要なのです。

私は娘の歯は

絶対に抜くような手当てはしません。

ですから、

若い方の歯を守りたいんです。

ただし、

既に歯が無い方も多いですから、

それはそれは、

知恵を搾ります。

設計に全精力を注ぎます。

長持ちさせねばなりませんから。

これから人生を過ごす上で、

色々あるでしょう。

そういう時に、

歯を喰い縛って、

乗り越えて貰いたいですから。

残っている歯については、

徹底的に、

歯が残るように技の限りを尽くします。

それが【歯の番人】としての使命ですから。

が、

つくづく感じるんです。

もっと速くに

私に診せて貰いたかったと。

生意気ですみません。

他所の歯科医師との腕比べなどには、

全く興味なんかありませんので。

序でに、

今日は先に話題に出した一番上の娘の誕生日です。

大学院の博士論文の仕上げ直前に、

新潟市にて、

この世に生を受けました。

遥か彼方で暮らしています。

毎日、

娘の顔が脳裏に浮かびます。

産婦人科から帰宅する道のりを

5キロ程でしょうか?

満天の星を仰いで歩いていたことを

娘の誕生日の誕生日の度に思い出すのです。

何にもしてやれません。

幸せでいて欲しいと祈るだけしかできません。

それが父親ってモノです。

だからこそ、

若い方の治療においては、

その方々の親御さんの想いを重ねて、

私は一層の馬力が出るんです。

 

 

 

歯科治療の面白さ

一般の素人の方には、

歯の治療の違いについて、

材質の違いくらいにしか、

実感できないのが普通だと思います。

が、本当は

【形】で、

【精度で】で、

全てが決まってくるのですよ。

それが、

歯科医師の【診たて】であったり【腕前の差】なのです。

セラミックを使えば金属より優れてる!

これは治療の【長持ち】とは全く関係ありません。

むしろ逆の結末を辿ることもしばしばです。

この写真は、

トアル患者さんがトアル歯科医院にて

治療をお受けになられたセラミッククラウンです。

噛み合わせ面を、

よーく観て下さいね。

で、

この写真は私が随分と前に治療した

金属のクラウンです。

上の奥歯です。

この患者さんの下の奥歯も私が治療させて頂きました。

その部分にはセラミッククラウンにて治療致しました。

下の奥歯は、

大きくお口を開くと、

よく観えますから、

慎重にセラミックにて修復させて頂きます。

が、

上の奥歯は、

余程でないと、

金属のキラリ!は観えません。

ですから、

私は金属のクラウンをできるだけ使いたい主義です。

何故?

観て下さい。

上下の奥歯が噛み合っている部分が、

研磨されて光っているでしょう?

また、

すり減っているでしょう。

私の技術の至らない未熟な処を、

金属と云う延性のある延びる材質が

補ってくれるんです。

これがセラミックだったら、

欠ける、

割れる、

歯の根が折れる!

なんせセラミックは硬くて脆いですもの。

ジルコニアなんて、

もっと硬くて、

私は恐くて使えません。

あと、

歯の山のような尖りを注意して観て下さい。

私の造る奥歯は山が高いでしょう?

噛み合わせを、

上下の顎の位置をシッカリと

この上下の山と谷が入り込んで、

サポートしてくれるんです。

このテクニックは、

私は、

相当に強気です。

これが歯科医師の腕の観せ処だと。

面白いのは、

噛み合わせの確認のために

カーボンでマークした色のついた

点と、

すり減って研磨され光っている部分に差があるでしょう?

これが、

噛み合わせの恐さです。

歯科治療の際のチェックなんて、

たかがシレテいるんです。

人工の歯は、

患者さんの日々のストレス下で、

絶えず擦られているんです。

その辺りを考慮した歯科治療が、

本当に面白いし、

マニアックなんです。

 

恵まれた環境

少年時代、

偉人の伝記に夢中になりました。

で、

あぁ云う人になりたいと、

憧れたモノでした。

それが人生って速いモノですね。

もう、

人生の終盤に入った私です。

未だに未熟者で、

秘かに情けなく思っています。

歯学博士の称号を28歳で頂いた頃、

私は生涯の師となる歯科界の巨星との縁を頂きました。

東京都麻布開業の内藤正裕先生です。

が、

先生とは同門ではありません。

ですから通常であれば、

私など可愛がって頂く環境にはありませんでした。

神様、仏様のお導きだと、

心から感謝しています。

私の診療台の目の前には、

先生のお写真を額縁に入れて掲げています。

治療の要所、要所にて、

先生のお顔にチラッと視線を向けて、

先生の目を意識し、

自分を戒めるためです。

また、

何か悩みがあれば、

何か迷った際には、

必ず先生に問うのは、

今も変わりありません。

先生は73歳になられてました。

今でも精力的なのは、

これも今でも変わりありません。

私はアル面において不幸です。

何故なら、

いつまで経っても、

師に追いつけないからです。

私が進歩しても、

悔しい哉。

師は先に進んでいるのです。

これは歯科医学の分野だけではありません。

全ての局面において、

私は生涯、

師に追いつけないでしょう。

今日、

ご紹介した師の写真は、

先生の休憩室での日常風景です。

私は最近になって白衣を纏って診療するようになりました。

それは大学病院では白衣がユニフォームですから

私も着る機会が増えたからです。

以前は、

ワイシャツにネクタイ、

で、

ベストの格好で、

患者さんと向き合っていました。

思うところがあって、

最近、

白衣に変えたのです。

大学の学生諸君に、

医師たる覚悟と嗜みを

観せるためです。

また、

ホームページをご覧になってお越しになられる方は

私の診療所のスタイルをご存知ありません。

初対面で会う私がスリーピースを着て応対すると、

とても緊張されておられるのが、

伝わってきたからです。

が、

昔からの患者さんからの

私は白衣姿の評判の悪いこと!

先生は白衣が似合わない!

落ち込むんですよ。

医師が白衣が似合わないって、

妙な気分になるじゃないですか。

と云って、

堅苦しい格好だと、

初診の患者さんが緊張なさるし。

また、

手術着を普段から纏っている歯科医師を

私は、

すみません。

小バカにしています。

野暮な奴だと。

私が患者としての立場であれば、

そんなセンスの歯科医師に、

自分の大切な歯は絶対に触らせません。

手術着は、

あくまでも手術の際にだけ纏うモノです。

また、

大学病院での、

口腔外科、麻酔科の歯科医師が

身に付ける衣装です。

その違いを判らない歯科医師に、

歯科医学独特のアイデンティティーは

絶対に理解できませんから、

上品で良質な歯の手当ては無理でしょうね。

これは私の師も同じ感覚であったので、

秘かに私は自分のセンスに安堵したのです。

治療において、

物凄く工夫するモンです。

それはプロですから、

当たり前ですよね。

でも、

患者さんへの

自分の見せ方、

話し方、

他にもイッパイ思案する毎日です。

少しずつ、

診療所の設備や備品、

治療方法も、

進化させねばなりません。

そんなよもやま話しを師に語ったら、

宅急便が届きました。

 

師の診療着でした。

そこから【考えること】は、

弟子たる私の責任です。

人生において、

誰を師と選ぶか、

それが決め手になると確信しているのです。

私は幸せ者です。

 

親バカぶりを笑って下さい!

思春期に入りかかった娘への対応が判らなく、

嫌われたくないと云う想いから、

恐ろしくて、

恐ろしくて、

ヤッパリ女性は恐いモンだと、

日々、

痛感しています。

ですから、

娘の日常を聞けません。

下手なことを言えませんから。

特に寮生活ですから、

尚更のこと。

その様ななか、

突然、

学校から封書が送られて来たのです。

???

ヤンチャな息子にハラハラさせられる経験上、

娘までもか!

と、

恐る恐る、

封書を開いた心境をお察し下さい。

コピーが入っていました。

これです。

法隆寺宮大工棟梁の著作への読書感想文でした。

歯の宮大工で在りたいと云う私の夢を

育ってきた環境から、

決して人格者ではないと自認する父たる私の熱い想いだけは、

娘は気付いていたのかもしれません。

単純の塊の見本である私の財布の紐が

全開になったのは言うまでもありません。

神社仏閣の柱に使う木材には神様が宿ると、

宮大工の棟梁は確信し、

それはそれは大切に扱い、

木材の質を読み込み、

木材の声を聞いて、

神様、仏様のお住まいの修復の細工に

命をかけているのです。

私は歯には神様が宿ると、

信じています。

歯の神様は、

西洋では聖アポロニア、

本邦においては、

前方後円墳で有名な仁徳天皇の弟君、

歳ですからお許しください。

お名前が、

喉元まで出かかっているのですが、

あぁ焦れったい!

今、出て来ません。

が、

その方が歯の神様と言われています。

私らは神様が宿る大切な器官を与る仕事なのだから、

そういう想いで、

手当てなさいと、

日々、学生諸君に対して、

口酸っぱく言う煩い教官が私です。

が、

本当に、

心底から私は、

そう信じています。

ですから、

私らは日々を、

歯のために捧げなければなりません。

が、

悲しいかな。

人には限界が在ります。

見落としがないか?

診断に間違いがないか?

正しい治療が出来ているか?

正確な手当てが出来ているか?

気が休まる時はありません。

それでも、

歯が大好きだから、

患者さんの笑顔に救われるから、

手先が動くんです。

何の取り柄もない未熟者です。

それでも、

歯の仕事との縁を大切に

人生を終えたいと思うのです。

で、

お気付きでしょう?

読売新聞の記事を額縁に入れた私は、

ヤッパリ阿呆ですよね。

 

 

若い人

最近の若い奴は!

と云う台詞を

誰しも1度は

聞いたこと、

言ったこと、

ある筈です。

が、

私はスケートの羽生選手を尊敬の念で応援しています。

清々しい。

で、

逞しい。

そして、

謙虚です。

息子を見守る父親の心境で、

プレーに釘付けになるのは

私だけでしょうか?

私は大いに反省するのです。

あぁでなければならないと。

気分転換

毎日はできませんが、

高松市で診療する日は、

ほぼ、

帰宅しての1時間だけ、

ガレージの中で、

古い車の修繕を楽しんでいます。

いくら古い車だからと云って、

別段に壊れている訳ではありません。

新車同様以上のコンディションにするためです。

と云って、

ハンドルを握って走らせるのは、

年に数回ですが。

女性からして観れば、

アホウの極みでしょうね。

ただ、

弁解ではありませんが、

私はゴルフをする訳でもなく、

盛り場へ飲みに行く事にも興味もなく、

パチンコやギャンブルなど

好きな方には申し訳ありません。

ギャンブルは紳士の嗜みに反すると信じておりますので。

何故でしょうか?

モノを細工する事に、

ウキウキするのです。

昨日のブログでお話しさせて頂いた

アメリカの人気テレビドラマ【NCIS】の

ギブス捜査官は、

自宅の地下室に工房を持っているのです。

で、

木材を自ら加工し、

ヨットをコツコツと製作しているシーンが、

しばしば観られます。

このヨットは模型ではありませんよ。

本物のヨットです。

リタイアメントした後の余生を海の風のなかで

癒す積もりなのかもしれません。

日々、神経が張りつめた緊張の中で生きているのですから。

息子から言われました。

コスプレ以外に、

過ごし方も、

まるでギブス捜査官やな。

奴はガキだから判っていないんです。

プロがプロであり続けてゆく事の大変さを。

 

自然美

審美歯科治療においても、

インプラント修復においても、

総入れ歯造りにおいても、

私が絶対に譲れない治療手順が在ります。

譲れないと云うからには、

その手順に、

私は全精力を注ぎます。

その手順とは、

仮の修復物を、

取り敢えずは患者さんの口腔に試して頂くことです。

ですから、

仮と言えども、

私はこだわって設計し、

工夫して製作しています。

で、

その仮の修復物の状態を叩き台として、

最終的に患者さんの完成歯をお造りさせて頂いています。

写真はトアル患者さんの

上の総入れ歯の前歯を、

蝋の上に並べている処です。

少々、歯並びを整然とは植えてはおりません。

その方が【自然】に他人目には観えるからです。

いかにも【入れ歯】を入れているようにだけは

絶対にしたくはありません。

それはセラミッククラウンでの審美歯科治療においても

同様だと、

私は考えています。

美しさの定義も様々でしょうが、

自然さこそ、

私は美しいと信じています。

コスプレ?

笑って下さい。

アメリカの人気テレビドラマである

【NCIS】のファンです。

主演のギブス捜査官が格好良い!

で、

仕事がオフの際の私は、

身も心もギブス捜査官になった積もりです。

【NCIS】の

キャップ、

パーカー、

Tシャツ、

キーホルダー。

あんまり格好良いので、

序でに、

息子にも同じモノを購入して

宅急便で送ったのです。

父ちゃん、

ここまできたら最早コスプレやで!

と云う息子も、

私が観る限りギブス捜査官。

そんな話しを有名なアメリカ人である知人にしたら、

今で云う【忖度( そんたく )】して頂きました。

【NCIS】の捜査官が持つバッジを送って頂いたのです。

ただし、

私は職員ではありませんから、

当然ですが、

私の名前とIDは記載されておりませんが。

私の診察室には、

アチコチに、

私のコダワリの品が然り気無く、

飾っています。

これで又、

私がウキウキしながら診察できる環境が整ったのです。

 

 

 

歯ぎしり

激動の世界情勢です。

その中で、

社会の第一線にて活躍し、

しかも、

長期間に渡って業績を維持し続けることは

他人には決して理解出来ない辛苦があることが

この歳ですから、

手に採るように判ります。

トアル私の患者さんの日頃にお使いになった頂いている

これはマウスピースです。

マウスピースと云えば、

通常は弾力性のある樹脂で製作するのですが。

無論、

この患者さんにも当初は樹脂のマウスピースを

お使い頂いていました。

が、

睡眠時の喰い縛りが凄まじく、

直ぐに樹脂に穴が空くのです。

単なる金属製のマウスピースに見えるでしょうが、

細かな箇所に、

様々な工夫を仕込んで設計しました。

ご覧ください。

噛む部分が対合する歯で、

光って見えるでしょう。

この金属は、

どちらかと云えば、

硬度ある材質を選んでいるにも関わらず、

ご覧の通りです。

睡眠時の喰い縛りは、

決して悪いことではないと、

私は考えています。

ストレスの発散ですから。

人にはストレスの発散は

とても大切ですから。

ストレス発散しないと、

心が潰れてしまいますよ。

でも、

何処かに出かけてストレスを発散できる訳でもなく、

買い物でストレスを発散できる時間がある訳でもなく、

趣味に没頭できる暇もなく、

仕事に命をかけて日々を過ごす方々って

多いのです!

その様な方が唯一に

手軽にできるストレス発散の方法は、

ご自身の自覚は無くても、

睡眠時に

ギュッ!と、

ギリギリ!と、

無意識に歯を喰い縛ることしか無いのです。

ただし、

歯科医師の立場、

歯の番人としては、

歯に過大な負荷が掛かる訳ですから、

これは困る訳です。

私は決して名医ではありません。

ただ、

歯が大好きで、大好きで。

ですから、

患者さんは大いにストレスを発散して下さい。

それでいて、

私は主治医ですから、

歯は私が守ります。