特別な処


新潟へ参ります時に、北陸道を車でかけ走ること、既に数十回は優に越えるとことになります。

越後の国と越中富山の国境には27だか29か、物忘れの激しい昨今、定かではありませんが

かほどに沢山のトンネルがあります。

此方から数えれば最後のトンネル、新潟から帰る時には最初のトンネルが、春日山トンネルです。

春日山は越後の覇者である上杉謙信公の居城である春日山城が、その頂にあります。

今では石垣のみしか当時を偲ぶモノはありません。

私はこの小高い山を貫いたトンネルを通過する際には、  

必ず、心の内で般若心経と毘沙門様のご真言を唱えています。

謙信公は毘沙門様の生まれ代わり、旗印に毘の一文字が描かれていたことは衆目の知る処です。

車の速度を80キロ程度に減速して、車内にて騒ぐ娘たちに

ー 静かにせぃ! ー

と、タシナメテ、これも習慣となりましたので娘たちも、それは承知で、

般若心経は言えませんが、

ー オンベイシラマンダヤソワカ! ー

の処は、皆で唱和しています。

しかしながら、誰がこの聖地のような山をくり貫くなんて暴挙をしたんでしょうか?

迂回すれば良いのにと、感じる私が古くさい人間なんでしょうか?

トンネルを抜けると、上越市の街並みが拡がります。

遠くに柏崎の岬も目に映ります。

もう少しの辛抱で、越後の平野の稲田と弥彦山が現れてきます。

かように越後新潟は、私にとっては特別な処なのです。

話は反れますが、飛行機や新幹線の窓から富士山の勇姿を目にした際に、

周りを忘れて、私は想わず柏手を叩いてしまうのです。

朝にお天道様を拝し時、夜の月天様を仰ぎし時にも、想わず柏手を叩いてしまうのです。

ー もうパパ!恥ずかしいから止めて頂戴! ー

と、娘たちからたしなめられている毎日です。