ただ1つ


若い時分には、

診療が終わったら街へと出向き、

クラブを二、三軒ほど梯子してなどと云う機会が日常でした。

といって目当ての女性が居た訳ではありません。

ただ何となく、

家は家人が子供の面倒を観て、家事をして、

仕事で疲れている時に煩いのはまっぴら後免という

単純な理由だったと。

海外や国内の学会なども

ショッチュウ行ってました。

家は家人がヤってるからと。

が、

思う処ありが半分、

二回目の家人が私を浮気性と

確固たる自信を持っていたのでしょう。

携帯電話や行動のチェックが厳しく、

私は何時からか、

真っ直ぐに帰宅し、

孫のような歳の娘たちを膝の上に乗せて

子守りもし、

家事も手伝おうと云う気持ちになりました。

本来の自分がどちらかなのかは判りません。

そのような時間を10年ほど続けてみて、

私は家の歯車の1つにしか過ぎないと。

言い換えれば、

空気みたいな、

時々に台風も生じますが。

私が歯科医と云う職人を選んだのは、

組織にそぐわない性格であることを

誰よりも知っているからです。

自分で自分にさえ真面目に向き合っていれば、

出来る仕事が、職人仕事だったからです。

また元来、書物に向き合うことが好きで、

工夫作業も好きであったからです。

私は家族であった人たち、

また、現状の家族から、

【自分の好きな事しかしない】

と、

呆れ顔で、

ある時には、

怒りをブツケられたことを経験しました。

が、

私は、

自分の周りの身近な人の幸せを

一番に考えて過ごしてきた積もりなのですが。

其々が、

その年々、年代、環境の変化で、

考えが変わっていることに私は気づいています。

私だけが、不器用で、

いつまで経っても同じである事も、

判っています。

【歯】だけで、私は、もうすぐ40年です。

ただ1つの事だけ、追っかけてきたのですから。