新潟市 都食堂


 人は何かしら
他の人間の温かみを
必要として、
其の人情に
身も心も
救われるものである。

 かように
人は独りでは
生きて往けぬ生き物である。

 新潟の柾谷小路の
古町十字路近くの
裏路地に
都食堂と云う名の
小さな定食屋が在る。

 長い間、
新潟に暮らしていた私は、
古町近くと云えば
盛り場ばかりで
定食屋の類については
まるっきしの無知であった。

 引き戸を開けると
据え置き棚の中に
色々なおかずが置いて在るのを
IMG00184選んで取って
食べる類の店である。

 所謂、お袋の味を
第一の売り物にしている
此の店を
私が知ったのは
倅に因る処である。

 店の女将は
夜の明けぬうちから
深夜に至る迄
年がら年中
此の店を
少ないパートを遣って
遣り繰りしている。

 倅にとって
祖母の歳に近い年頃の
此の女将は
倅の心の琴線に
正に触れた様であった。

 越後の人間は
外の寒さと違って
誠に心暖かい人が多い。

 私が新潟へと出向いた際に
必ず最初に顔を出し、
日頃の倅への温情に対して
礼を申し上げると供に
女将の漬け物と
温かい味噌汁に
両の掌を
合わせるのである。