兄妹


車体のアチコチからの軋む音に、

神戸に着くまでに空中分解するのでは?

と云う娘の心配を余所に、

都はるみのカセットテープの音量を上げて、

大いに気分爽快にて、

40年は前のアルファロメオのエンジンの爆音を轟かせ、

ハンドルを握りしめたる私です。

とは言へ、

神戸の街にたどり着いた時には、

安堵したのも事実。

芦屋川、夙川の桜はまだまだでありました。

此処にはまだ春は来ていないようです。

3階の部屋へはエレベーターがない

昭和色彩濃いコンクリート造りのアパートメントを

ことのほか気に入っています。

トイレ、バスもレトロそのもの。

娘はタイムスリップした気持ちのようです。

息子の子分のアール君も

ドアから尻尾フリフリ、

息子を引き連れ帰って来たら、

それまで煩いほどに語りかけてくる娘は

父親は御用済みになった模様。

兄に連れられて、

何処かへと行ってしまって、

アール君と二人での留守番と相成った次第です。