砂の山


仕事や芸の苦労は買ってでもやれと、

そんな風に叔父から言われ大きくなりました。

仕事や芸の苦労と一口に言いますが、

その克服には大変な辛苦を経験しなければなりません。

それでも、

長い経験の積み重ねでしょうね。

仕事や芸の悩みは、

自分自身の流した汗と涙と血が、

どんなに苦しくても成果へと繋がるんだと云うことが判りました。

しかし、

私が古い人間だからと一言で片付けて欲しくありません。

長い間、家庭運営に苦しみました。

諸悪の根源は私そのものだそうです。

考え方、

態度、

言い方、

全てがダメなのだそうです。

歯科医学の習得のための辛抱って大変なエネルギーを要します。

歯科医学の門を叩いたのが18の歳でした。

以来54に至るまで、

歯科の真髄を夜空の一点星のように焦がれて、焦がれて、

情熱失せることなく、

時には自身に鞭をいれて、

探し求めて来ましたし、

未だその最中です。

しかし、

家庭運営は諦めました。

波打ち際の砂浜に幼い頃、

よくサラサラの砂で山を造ったのを思いだします。

歳とって私が造ろうとした山は、

砂がもっと、もっとサラサラで山の形になってはくれませんでした。

よーく観ると、

山そのものが、

押し寄せては退く波の間際に在ったようです。