森の石松から


今朝は急患にて診療所へ出て来ています。

徳島県ご開業の医師の患者さんです。

インプラントの上に繋ぐキャップのような部品が

緩んで取れたとのこと。

どちらもが休診日であるので、

却って都合が良く、

今朝、お出で頂く事に相成りました。

お約束の時刻よりも2時間ほど早く出勤し、

診療所の全ての窓を全開にして籠った空気を入れ替えし、

石階段の雑巾掛け、

フロアーカーペットの掃除機掛け、

序でに、

掃除機の吸い口の掃除などと、

ジッと出来ない質なのです。

マリリンは同伴です。

院長室のソファーで寝そべりながら、

向かい側の私のデスクのほうをチラホラと。

穏やかな朝を過ごしています。

通常、診療所では院長室の中に居ても

落ち着きません。

診療所のドアを開けた瞬間から、

私の気持ちは高揚しているからです。

飄々と観せているのは、仕事の顔であるからです。

患者の一挙一動を見逃すまいと、

医師の眼で診ています。

長い緊張感の持続を必要とします。

ですから、

自宅では辛かったですよ。

自宅は私の欠点をジッと探されている場所でしたから。

今は今で辛いですね。

自分たちの大切、必要な品だけ持ち出して、

生活感が残っていますから。

日本の男を本当に怒らせたら恐いよ。

私が幼い娘たちに教えていなかったことが、

この言葉です。

浪花節が好きで、

森の石松最後の巻のクライマックスに

なんど咽び泣いたか判りません。

喧嘩っ早い石松は、

次朗長親分との硬い約束にて、

金比羅様の参詣の道中に喧嘩しないと

刀の鞘と刀の鍔に封をしていたのです。

ヅタヅタに切り刻まれても、

石松は、

親分との約束を守ったまま死出の旅へと。

その結末を知るや、

清水の次朗長親分は怒りました。

怒りは富士のお山の高さを凌いだものでしょう。

大勢の子分衆を率いて、

石松の仇を打つその続きも圧巻です。

人は我慢の時も必要です。

耐えて、堪えて、

ジッと屈み、

自己を反省し、

自己を見つめ直す時も必要です。

が、

我慢にも限界ってものが在るってことを、

人は知らなくてはなりません。