本音


初診の患者さんの診察を終えて、

後日、

次回のアポイントメントが入っていないのを

アポイントメント帳にて確認し、

ガッカリするのが普通なのでしょうが、

逆に、

ホッと安堵する。

そんな症例も少なからず在ると云うのが本音です。

昨日、

著名な歯科技工士さんがお越しになられていました。

この方の造る歯を、

業界では、

今のうちにコンピューターに記録しておく、

そのような方です。

私の患者さんの立ち会いに来られていたのです。

色調再現の難しい症例であったためです。

その待ち時間の出来事。

机の上のレントゲンを覗きこむ彼。

で、

先生、この症例はどうなさるん?

やはりシッカリとした仕事をされて来られた方は判るんですね。

私ですか?

でしょっ!

したくないんです。

医者が治療したくないとは!

ケシカラン!

お怒りになられるかもしれません。

彼が仰いました。

ロシアンルーレットですね?

やはり判っておられます。

歯科医師免許を持っているからと、

皆が同じと思われては、

申し訳ありませんが、

と云う気持ちになる時があります。

この症例にブリッジ、インプラントなどもっての外!

そんな症例も多いのですよ。

当然、

患者さんは入れ歯を好みません。

支えの歯の寿命が

私には明確に判ります。

ギリギリの攻めぎあいをしなければ!

そんな症例も確かにあります。

が、

絶対、手を着けてはいけないと、

現状維持がベストな症例も

明確に判断できるんです。

特に根管治療済みの歯の取り扱いに、

治療すべきか、

断念した方が無難かの判断は、

患者さんの方には判りませんから。

現状よりも

希望的観測をしたいのが人情ですから。

その辺りの心情もよく判ります。

長持ちすると確信できるんでしたら、

当然、

私も腕によりをかけて頑張りますよ。

長持ちできる状況じゃないでしょ!

言いたいけど、

言えない、

また、

理解して下さらない場合には、

何処か他所に行ってくれィ!

心のうちで逃げだしたいと。

そんな時も在るんですよ。

この歯科技工士さん。

情熱家でらっしゃる。

レントゲンを観ながら、

ぶつぶつと、

これは教育が悪いのか、

制度のせいか、

なんだかんだ仰っておられました。

私なんぞは、

その辺りは、

とっくに諦めています。