馬鹿げた格闘


院長室の窓の向こう側は、

大きく左右に揺すられるように動く

大きな街路樹と、

風の轟音と、

車の挙げる水飛沫の音とだけ。

禁煙によるニコチンを欲する肺胞を

胸にジワジワと実感し、

実な肺胞に感情など在る筈もないことから、

本当は脳髄が、

そのような偽りの指令を出して、

私の心を試す以上、

挫折させようと云う意地悪さを、

そんな葛藤と戦っています。

しかし、

自分の胸部レントゲン像を診て、

繊維化が進んでいることに気づかぬ筈はなく、

健康を維持するには、

これ以上の喫煙は、

近い将来に必ず自らの頸を締める結末に至ると云うことを実感。

別の脳髄では、

明確にしなければならないことを

判っている筈にも関わらず。

気晴らしのキャンディの舐め過ぎでしょうか?

舌の先がピリピリします。

呼吸のリズムの度に、

大きく肺胞がニコチンを繰り返し繰り返し

欲しています。

人間関係に於いても、

このような場合もしばしば経験してきました。

心と脳味噌の判断結果の相違です。

この際には、

心持ちよりも脳味噌の判断の方が

冷静で正しいと、

これまた明確に判っているのですが。

難しい処ですね。

それに比べれば、

禁煙などメカニズムが単純ですから、

楽であると、

自分に自分で言い聞かせる。

そんな全ての局面に於いて

馬鹿げた格闘に四苦八苦です。