帽子


【アルプスの少女ハイジ】のアニメを観て、

ですから、

小学校低学年の頃でしょうね?

お祖父さんが被るチロルハットを凝視する

自分の表情が手に取るように思いだせます。

4、5年頃になると

シャーロックホームズが難問奇問を解くさまを

白地に黒いペン一色で顕す挿し絵にある【あの帽子】。

頭頂で結んだ紐を解どくと、

両の耳が隠れると云うアレです。

無論、

私が大いに興味を抱いたことは云うまでもありません。

親類縁者にとって、

少年期の私の様が、

さまざまな種類の帽子で皆の記憶に残ったことも

云うまでもありません。

尚登へのお土産は【帽子】

それが皆の暗黙の了解であったそうな。

それほどに私は帽子が好きでした。

それが、

いつ頃からか、

私と帽子の付き合いは途絶えました。

色気ついて、

気恥ずかしくなったからでしょう。

それでも、

海外に赴いた際には、

野球帽にサングラスが、

私の定番でもありましたから、

私の潜在意識に帽子が刷り込まれていたのでしょう。

普段の私はスーツを纏っています。

スーツに野球帽と云ういでたちがマッチする筈はなく、

やはり普段の私から帽子は見られなくなりました。

が、

今年の猛暑の凄まじさに、

ついに思案に思案を重ねて、

帽子売り場へと足を運んだのです。

それでも、

大いに躊躇したのです。

某ニヒルな大臣のように観られないだろうか?

被っては鏡で写し、

で、

落胆。

傍目からすれば滑稽であったと思います。

何度繰り返したでしょう。

で、

ある黒い帽子が私の心を射ぬいたのです。

街にて、

妙な格好のオジサンを見かけたら

私かもしれませんよ。