琵琶湖の畔にて


歯科医師としての使命を

虫歯の制御についての研究だと気づき、

この命題に対して

本格的に取り組んでから

数年が経過しました。

で、

河川や池、沼、湖へと

赴く機会がしばしば。

水源の汚染問題に対して、

地方自治体も本格的に取り組んだ感があります。

最近では魚や昆虫などの生物も、

昔ほどとは言えませんが、

還ってきたようです。

その汚泥の浄化に役立っているのが

微生物の力です。

私はこの点を最重要視しています。

水源の汚泥と、

虫歯に罹患した象牙質が似ている処に着目したのです。

ですから、

暇さへ在れば、

そういった場所で私の姿が頻繁に観られると思います。

濁った水源の堤が私の研究のネタもと、

宝庫と言って良いでしょう。

採取したサンプルは直ちに冷蔵保管します。

また、

持参の顕微鏡にて概要を観て、

資料の区分けに勤しんでいます。

こういう表現は申し訳ないのですが、

綺麗とは言い難い広い水源に私は惹かれているのです。

琵琶湖です。

余談ですが、

私が産まれて初めての水浴が琵琶湖であったそうな。

そんなことを思い出しながら、

まとまった休日の有効利用だと思い、

琵琶湖まで足を伸ばしたのです。

その序でに、

私にとってのパワースポットである

【安土城跡】へと。

初めて此処を訪れたのは、

高校1年の夏休みでした。

人生初の独り旅です。

リュックを背負い、

在来線に揺られて、

4泊ていどの小旅行でしたが、

私にとっては大きな冒険でしたから

今に思うと可愛らしいことと。

その際に、

小高い山の頂きに

悠然とそびえる天守閣をイメージしつつ

田んぼの畦道を歩いたものの、

来て観れば、

荒れ果てた姿に唖然としたのを覚えています。

その後、

秘かに歯科医師を心ざしたる際にも、

また、

若き歯学を学びし学徒たる私が、

進む方向に悩んだ際には、

天守台の石垣に立ち、

向こうの琵琶湖を望んで、

思案すること一度や二度ではありません。

この城の主人は、

人間50年と唱ったようですが、

少年から青年期を此処に立った私も、

既に50の半ばとなりました。

目の前に拡がる光景は変わりました。

光景を望む私も老いました。

が、

歯科医学への情熱は未だに炎々と燃えています。

再び私がこの地に立ったのです。

私に新たなるエネルギーが宿ったことは言うまでもありません。