診療所のお掃除オバチャン

診療所のお掃除オバチャンとして、

今月から、

週に3、4日、

朝の9時から午後の3時過ぎまで、

診療所の至る所を

ピカピカにしてくれるHさんは、

元はと言えば、

長い間の私の患者さんの一人です。

御年72歳。

御亭主は76歳のお子さんには恵まれ無かったものの、

仲睦まじい老夫婦です。

Hさんは2年前に、

胃癌にて胃を全摘しました。

ガリガリに痩せて、

お綺麗な方でした事が、

余計にさんには堪えたのでしょう。

死にたい、死にたいと、

繰り返して、

苦悩に喘ぐ日々を観るにつけ、

高松市在の方でしたので、

毎週、毎週、

口腔内のクリーニングだと理由をつけて、

診療所まで、

それをHさんとの約束事にしたのです。

長年、通って頂いた大切な患者さんです。

誤解されると辛いので、

申し上げますが、

お代は頂いておりません。

私の顔を観て、

先生、私は大丈夫かしら?

毎週の定例行事となって1年少々。

折角に神さまが下さった残りの貴重な時間です。

チョッと、

私を助けて頂けませんか?

えっ?

私の診療所はご覧の通り広いですし、

アレコレ私の収集品を飾っています。

埃を払ったり、

階段の手摺を拭いたり、

額の拭き掃除やアレコレ。

お掃除オバチャンやって下さいませんか?

裕福な方に申し訳ありませんが、

時給はこの程度で勘弁して下さい。

私の診療所は大勢人を雇うほどの大規模歯科医院ではありませんから。

という塩梅にて。

ご実家が関西地方の旅館を営み、

そこで育ったことと、

大学を卒業したあと、

神戸のホテル勤務の時代があったこと。

ホスピタリティについて、

私のこだわりは、

長年の患者さんとしても、

重々承知のHさんです。

今ではスッカリと打ち解けて、

私をスタッフと共にからかう程に元気になられました。

私の洗礼式には、

ご夫妻で参加し、

私の現生での死と復活の儀式を観て、

グッと互いの距離感が縮んだような気がします。

人は誰かのためにお役にたつと気づいた時、

力を発揮するという言葉を、

Hさんの日々の姿に思い出すのです。

私が良い診療ができますように。

私の患者さんが快適に診療所で過ごせますように。

Hさんの祈りのお掃除です。