かかりつけ歯科医


もう10年は、

優に越えた頃だったでしょうか。

【かかりつけ歯科医制度】なるものが、

健康保険の治療費用として点数評価された事がありました。

が、

いつの間にか、

ウヤムヤとなり、

点数と共に、

その制度そのものも

消えてなくなりました。

かかりつけ歯科医という関係ですが、

コレは、

国の制度で縛られる類いのモノではないと考えています。

歯科医という個人の人間、

患者さんという個人の人間、

人と人との関わり合いを、

制度で評価し、

ソレを点数表示することに、

私は大いなる違和感を感じていました。

私は長い間、

開業歯科医を生業として過ごしてきました。

20年を越える関わり合いの患者さんも多いのですが、

途中、

来院を中断された方も少なからず居られます。

私はハッキリとモノ言う質です。

私の一言が、

その方のシャクに触った事もあったかと思います。

また、

治療を巡る方針の相違から、

私の診療所を去った方も居られます。

ただ、

興味深いことは、

10年も経てば、

そのような方の大勢が、

私の診療所へと帰って来られるのです。

悲しいのは、

悲惨な状況に至っている共通項が診てとれますこと。

40代の頃は、

正直申し上げて、

だから言わんこっちゃない。

こんなになってから、

どう治せと言うんだよ。

腹立たしい気持ちを抑えて、抑えて、

歯科医という仕事の矛盾だらけを

歯の芸に打ち込むことで

まぎらわせていたのが事実です。

しかし、

ある時に、

ふと、

自分の考え違いに気づいたのです。

最後は、

私を思い出して下さったのだと。

崩壊した口腔は、

昔の私が予想した過程を辿っていました。

私の診断は正しかったのだと。

歯科医の診断は、

将棋や囲碁を指すような類いの処が多数を占めます。

先に先を読んだ者が勝利の栄冠を勝ち取ります。

歯科医は、

それに加えて、

手先の器用さも勝ち負けに影響します。

ですから、

私は患者さんとの会話や治療の手当てを

より丁寧に丁寧にと綴ることに

力を注ぐようになりました。

患者さんの側は素人でらっしゃるから、

私の本意は知りません。

ソレで良いのだと思っています。

患者さんとの何気ない会話から、

医師からの服用中の薬の影響で、

逆の効果が起きていることにきづき、

処方を変えて頂く機会が多々在りますし、

長い間の関わり合いから、

全身疾患を疑い、

他科に検査を依頼し、

大事から免れられ、

患者さんと共に喜びを分かち合った機会も多いのです。

現在の私は、

診療に関して、

物事を難しく考えないようにしています。

目の前の患者さんが、

ズッとお元気で、

美味しく何でも召し上がって頂けるように。