春の北陸道


毎月、何年も通い続けている新潟へは、決まって北陸道を走る私です。

他のルートも在るのですが、時代劇ファンの私としては北陸道沿線の地名を記す看板を傍目に通りすぎる時、
戦国時代の武士の名と物語が頭の中を過り、とてつもなく心の高揚を覚えるのを好んで
ついこの道を選んでしまうのです。

高槻市辺りで高山右近を、天王山トンネルをすぐる時から山崎付近で明智光秀を、山城で時代はズーと下がって内蔵助。
叡山を左手に仰いで琵琶湖が視界に入った辺りから滋賀、福井、金沢、富山そして越後の春日山のトンネルを走り抜けるまで
歴史の主人公に事欠かない絶好の気色恵まれたる北陸道です。

車中、私は音楽を聴きません。

高松市から新潟市までの片道880キロメートルに及ぶ行程に、他人からは退屈で無いのかしら?と
問われる事しばしばですが、気色を視界に

ー 嗚呼この山は、あの大木は、あの時代のあの事件を目撃していたに違いない! ー

等と、空想しているうちに車は越後平野に入ってしまうのが常となりました。

なん十回も走り続けていても飽きさせない魅力が、この北陸道にはあります。

弥彦の山の姿を探し、嗚呼帰ってきたと心踊り、信濃川に懸かる萬代橋の美しさに安堵するのも何時もの通り。

暖かくじゅうにぶんの湿気を含んだ大気が、大陸からのゆったりとした流れに動く様を身体で感じます。

スケール大きい新潟。

私はこの地に立って、今を生きているを感謝します。