月別アーカイブ: 2013年12月

心遣い

 診療では無い方の来院が予め判っている際には
訪問時刻前後の一時間半位の間は
患者さんを入れずに私は来客をお待ちする様にしています。

 通常の診療に於いても
私の診療所の中で
患者さん同士が顔を会わせる事はありません。

 待合室で患者さんが並んで座って
診療を待っているとか、
次回の診療予約を採ったり
会計の際に、
後ろに他の患者さんが居る事など
もっての他であると私は思っています。

 トイレの中は
便座の染一つ
洗面台の水滴一つ
ゴミ箱の中のペーパータオル一つ
絶対にありません。

 どなたかが御使いになられた後
直ちにトイレの清掃をしているからです。

 診療所の中に消毒液の匂いがする事もありません。

 実際に仕事を行う診療室は
数寄屋橋次郎の賄いのように
舐めても大丈夫な程に
清潔さを保っている自負があります。

 その様な積み重ねが
歯科医としての
最低限の心遣いだと私は思っています。

無菌的治療方法 その5.

IMG00239 今まで治療に使う器具の滅菌と
生きている歯の細菌感染からの防護についてお話しました。

 ここからは歯の神経を採る際についての
無菌的治療方法についてお話しさせて頂きます。

 虫歯が酷くなって炎症が神経にまで達してしまったら
残念ながら神経を採らなければなりません。

 この際にも
唾液との戦いになります。

 歯の神経を採ると云う事は
歯の中は細菌に満たされています。

 この細菌を完全に死滅させなければなりませんが、
治療中に口の中の唾液が歯の中に入れば
幾ら経っても
歯の中は無菌的環境になりません。

 そこで此処でも
ラバーダム防湿方法の出番です。

 写真の様に
治療する歯だけがゴム製のシートから
顔を出しています。
 器具は神経を採る道具です。

 この様にラバーダム防湿方法を用いる事によって
私は歯の中の細菌の死滅だけに専念する事が出来ます。

 ラバーダム防湿方法を用いなくても
神経を採る事は出来ますが
唾液からの細菌感染は
確実にあります。

 治療が終わってから何年も経っての
炎症の再発を防ぐ為には
ラバーダム防湿方法は必須の手順です。

無菌的治療方法 その6.

 どの様な理由にせよ、
歯の中の神経を採ると診断して治療に入ったのならば、
完全無比な位にまで
神経をその繊維一本にまで
除去しなければなりません。

 でないと、
残った神経は必ず腐って
後から病気の原因となるからです。

 通常、神経を採る際には
とても細い針の様な器具を使います。

 この器具が根の先にまで完全に達していないと
根の先の神経の取り残しが生じます。

 レントゲンによる確認は大切ですが、
正直、それだけでは不十分です。

 人の身体は電気を通します。
この性質を利用して
電気的に根の先に器具が届いたかを
確認する電気的根管長測定方法も有効です。

 但し、根の先の状態によって
電気の流れも変わってくるので
この方法で完璧とも言えないのが事実です。

 結局の処、
神経を完璧に取り除く治療は
様々な検査方法を駆使しながらの
歯科医の技量に依る処が大きいと云うのが
本音です。

 神経を採る治療について
歯科大学では
教育、研究、治療の実際は
歯科保存学の担当となります。

 私は歯科保存学を専門とする大学院へと
進みましたが、
当初の一年二年の間は
今では考えられない位の長時間を懸けて
神経と悪戦苦闘したものです。

 哀しいかな、技術職と云うものは
矢張、手先の起用不器用と云うものがあります。
術者の技術の差があることは否めません。

 ラバーダム防湿方法によって
無菌的治療環境を作っても
神経の取り残しが在れば
細菌の巣を残す結果になります。

無菌的治療方法 その4.

 三枝デンタルオフィスでは
削った歯の完全防備の為に
様々な作業を行っています。

 そのために、
詰め物や被せ物の中が
後々になってから傷む事はありません。

 生きている歯の治療に於いて、
歯形を採る段に
仮歯を外して歯形を採りますが、
この時、麻酔注射は要りません。

 何故なら、痛くないからです。
歯科保存学の最先端治療で
歯の象牙細菅は完全に封鎖されているからです。

 冠や詰め物は歯科用セメントで
歯とくっ付けられます。
 
 但し、どんなセメントでも
永年使っていると
口の中の水分を吸収して膨張したり、
噛む圧力や
熱い物を食べたり冷たい物を食べたりでの
口の中の温度の差によって
物性が弱まり、
唾液の侵入を許してしまいます。

 この時、
象牙細菅が完全に封鎖されていると
断然有利であることはお判かりでしょう。

 歯の治療に於いて
押さえておかなければ為らないポイントは
幾つかありますが、
細菌感染に対する防御は
最も大切な処です。

 

無菌的治療方法 その3.

 歯の表面を覆っている
人の身体の中で一番硬い構造を持つエナメル質。

 このエナメル質を取り除くと
象牙質と云う組織が
歯の中心部にある歯の神経を
取り囲む様に
包んでいます。

 硬い硬い歯ですが
この象牙質は
決して石ッコロの様な
単純な構造ではありません。

 細い細いストローの様な中空の菅が
沢山束ねられた様にして
象牙質を形作っています。

 中空の菅の一端は神経の側に
もう一端は歯の表面へと
言い替えれば、
歯の中心部から表層へと
中空の菅が束ねられて
象牙質は形成されています。

 歯を削り、
エナメル質が取り除かれると
この象牙質が剥き出しになります。

 歯を削った際に、決して神経を触った訳ではないのに
激しい痛みを感じるのは
歯を削った先の向こう側の神経まで
中空の菅を通して繋がっている為です。

 この中空の菅から神経側から
歯の全体に渡って栄養が送られてもいます。

 私達はこの中空の菅を象牙細菅と呼んでいます。
この象牙細菅の中に細菌が侵入してしまうと
後々厄介な事になります。

 歯の治療が終り
人工物で封鎖した内側で
象牙細菅の中に侵入した細菌が
活動を始めます。

 歯の治療が終わった歯が
後々になってから
痛みだしたり
神経が死んでしまう原因の大半が
細菌の感染に由るものです。

 三枝デンタルオフィスでは
削った歯の表面に対して
化学的な処理を行います。

 文献的に酸溶液で削った歯の表面を
処理する方法もみかけられますが、
この方法では
象牙細菅を形作っているコラーゲン繊維が
壊されて歯そのものが傷んでしまいます。

 そこで特殊な溶液を使い分けて
歯を傷める事がなく
象牙細菌の中に侵入した細菌を殺菌し、
加えて
象牙細菌の中に細菌が侵入出来ない様に
完全封鎖してしまいます。

 これが歯科保存学の最先端治療です。
この辺りは決して、患者さんには気づいて頂けませんが
プロとしての心意気であると
私は思っています。

無菌的治療方法 その2

 口の中での治療は
常に細菌による感染の危険性に
曝されています。

 虫歯の治療に於いては
先ずは、
完全に虫歯菌に侵された部分を
取り除かなければなりません。

 これは虫歯検知液を使う事で
解消されます。
この検査液は
細菌感染のある部分を
赤く染めだします。
 この虫歯検知液を使うと
虫歯の取り残しはありません。

 虫歯を取り除かれた部分は
云わば裸になった
キレイな歯質です。

 この部分に唾液がかかると
細菌感染します。

 キレイになった歯質に
唾液がかからない様にする為に
私の診療所では
必ずラバーダム防湿方法を行います。

 薄いゴム製のシートに
小さな孔を開けて
その孔から治療する歯を露出させて
口の他から隔離して仕舞います。

 そうする事で
治療する歯を
唾液や吐く息の湿気からさえも
護る事が出来ます。

 ラバーダム防湿方法は
歯科保存学の教科書の
第一章の無菌的治療方法の
一番初めに記述されている位、
基本的な手技です。

 ラバーダム防湿方法は
正に無菌的治療方法の初歩の初歩的
治療方法です。

 仮にいくら高額な冠を被せても
唾液に汚染された上からでは
余計に嫌気性菌の繁殖を
助ける結果になります。

 ラバーダム防湿方法なくして
無菌的治療は不可能です。

無菌的治療方法 その1

 歯の治療に於いては
当たり前の話になりますが、
口の中での作業となります。

 ご承知の様に
口の中は唾液で常に
湿った状態です。

 唾液の中には
おおよそ1ミリリットル中に
1億~2億の細菌が生息しています。
又、他にも
数え切れない位の
ウィルスやカンジダ等のカビ類も
生息しています。

 治療に於いては
虫歯でも歯周病でも
清潔な環境下で
これ等の微生物を
排除しなければ
再び炎症の再発が
免れません。

 ここでは治療に使う器具類を
清潔に保つ滅菌について
お話しします。

 通常、細菌等の微生物が
治療に於いて処置部分に対して
悪さをしないように
又、
患者さんから患者さんへ、
患者さんから術者へ、
術者から患者さんへの感染を
徹底的に排除しなければなりません。

 その為には
清潔な器具類を使う必要があります。

 殺菌、滅菌と云う
言葉をお聞きになった事があるかもしれません。

 殺菌と云うのは
細菌を死滅させます。
しかしウィルスやカビを
死滅させる事は出来ません。

 対して滅菌は、
全ての微生物を死滅させる事ができます。

 でありますから、
治療器具は滅菌レベルのものを
患者さんに使わなければなりません。

 大きく別けて滅菌方法には
1.乾熱滅菌法
2.高圧蒸気滅菌法
3.ガス滅菌法
が、あります。

 一般的なのは高圧蒸気滅菌法です。
しかしこの方法は高い熱がかかる為に
ゴム、プラスティック製品に対しては
使う事が出来ません。

 歯科治療に於いては
ゴム、プラスティック製の
器具類が多くあります。

 そこでこれ等の製品に関しては
ガス滅菌法が対照となります。
但し、此の方法は
器具の滅菌に
多くの時間を要します。
私の診療所では
このガス滅菌法が中心ですが、
診療が終わってから
滅菌機械のスイッチを入れて
翌朝に全ての行程が
終了している位
多くの時間を要します。
 加えて、
この滅菌機械の滅菌容量に
限りがあり
一度に多くの器具類の処理が
出来ません。
 又、
高額なガスのコストが掛かる事も
事実です。

 乾熱滅菌法は
私の診療所では無くては成らないものです。

 一度滅菌しているガーゼや綿花などを
患者さんに使用する直前に
この滅菌法にて
再度、清潔します。

 治療に使う器具類は
完全滅菌したもので
なければいけません。

 使い捨ての
ディスポーザブルの物も
多く使いますが
全ての器具が
完全に滅菌した状態で
治療に望まなければなりません。

良い歯と身体の会

 私の専門は歯科保存学です。

 歯科保存学と云う学問は、
歯科の中の一つの専門分野で、
歯と歯肉、そして歯を支える骨にまつわる
病気の予防と治療を研究するものです。

 歯科大学に於ける教育では
歯科保存学は具体的には
1.虫歯の予防と治療
2.歯の神経を採る治療
3.歯周病の予防と治療

 を担当しています。

 私は歯学博士の学位を授与された後に
レイモンド.キム先生の歯周補綴と云う考え方の
影響を受けました。

 歯周補綴と云う学問は
歯を被せる際に
歯肉や歯の周囲の骨を
傷める事が無いように
人工の修復物を
身体との調和をはかりながら
長持ちさせるものです。

 歯科保存学を専門とする私にとって
歯周補綴は
正に的を得た学問でした。

 私のインプラント治療も
歯科保存学をベースにしたものです。

 但し、
長い間の臨床生活で
歯の健康には
身体と心の健康な状態が
どれ程大切で在るかを
実感しています。

 そこで私は
歯科保存学の専門家として
歯と歯の周囲の歯肉、歯槽骨が
いつまでも健康でいられる様に
全身にも目を向けて
皆さんに共に
考へ、
勉強し、
実践して頂きたいと
良い歯と身体の会を主宰し
歯科医としての
最後の締めくくりをしたいと思います。

真の友達 その2 

 私には、とても仲の良い友達がいます。
私と大学時代の同級で、
彼と私とは丸っきり性格は違いますが、
何故かウマが合いました。

 彼は今は
治療の現場から退いて
医療系大学の教授として
研究と教育に携わっています。

 その彼との会話の中で
私は来年からの抱負として
ある事を始めようと思うに至りました。

 正しい歯の治療の知識を
一般の方々にお伝えする事。

 私は大学院で歯科保存学を専攻しました。
歯科保存学と云うのは
歯を長持ちさせる治療について研究する専門分野です。

 歯を長持ちさせる為には
色々な事に配慮しなければなりません。

 その為には
一般の方々の知識を高める事は
とても大切なポイントとなります。

 どの様な形で
皆さんの歯の治療に対する知識を高めるかを
今はじっくりと思案しています。

 

真の友達

 群馬県の医療系大学の
解剖学の教授を務められている親友と
昨夜は長い時間、
電話で話し込んでいました。

 今、お気づきになった方も
いらっしゃるかもしれません。

 そうです。
私の語り口調が
このブログから
変わりました。

 この群馬県の親友は
私にとっては
真の友達であります。

 彼は歯科医の三代目です。
私と同じ年に
彼の父親の母校であります
日本歯科大学に入学しました。

 大学卒業後、
私と彼は
同じく母校の大学院へと
進みました。

 彼は解剖学を専攻し、
歯学博士の学位を取得した後、
故郷である群馬県前橋市の
両親が営む歯科医院へと
帰って行きました。

 なんだ、家業を継いだんじゃないかと
思われるかもしれません。

 一般的には
その様に捉えられるでしょうが、
彼の場合には
特別な事情が在りました。

 彼の父親も母親も
大変高名な歯科医師です。

 父親の造る入れ歯や冠を被せる治療は
天下一品のものであり、
彼の母親の歯を長く残す治療は
当時の最先端のものでした。

 恐らく、若い歯科医の修行先として
これ程恵まれた場所は
無かった事でしょう。

 私は彼の人柄を
よく知っています。

 コツコツ真面目に
何事にも取り組む
誠実な人柄です。

 両親の元で
立派な歯科治療を
修得したことは
間違いありません。

 治療の間を縫って
彼は自身のライフワークである
歯茎の微細研究も行っていたようです。

 彼の母親も今は既に
この世には無く、
昨年末で
三代続いた伝統の歯科医院の
看板を下ろし
彼の父親は引退し、
彼は解剖学の教授に就任して
第二の人生を歩み始めました。

 ー 三枝な、知っての通り
     僕は大病してね、
   今は好きな研究して幸せなもんさな。

   真面目に歯科治療をしてきたよ。
     でもさ、今は何か変だろ?
   歯を治す医者じゃなくて
   美容業界の人間みたいでさ。

    良いしっかりとした仕事は
   地道で地味な仕事さな。

    それよりも
   派手な広告やホームページで
   自慢しまくる奴等のほうが
   商売上手いときたもんだ!

    正直云って
   医院経営は楽じゃなかったよ。

    今は本当に気が楽になったけど、
   まぁ、僕は開業医は向いていなかったんさ。

    僕は三枝を応援しているよ。
   君は今の時代に珍しく
   職人仕事を貫いているからさ。

    ただね、
   今の時代は優しさの時代で
   コダワリとか厳しさって云うのは
   伝わり難いんだよ。

    僕は三枝の書き方はすきだけど、
   一般には
   優しさの口調で書いた方が
   もっと三枝イズムが伝わると思うんだ! ー

  彼は私にとっての真の友達です。

  私は素直に友の意見を採り入れ
 今日このブログから
 書き方を変える事にしました。