月別アーカイブ: 2014年5月

私の患者さんとの関わり方 その9.

今日は午後から、先日初診で来られた患者さんへの検査結果説明と治療方法の提案の予約が入っています。

毎日、検査所見を机上に置いて、頻繁に眼を通して治療方法を考えて過ごします。

治療方法は星の数ほどあります。

その中から、患者さんのパーソナリティー等も考慮して1つの方法を探さなければなりません。

無論、患者さんも治療方法を選択出来るように、幾つかは絞りこんでいくのですが、
それでも、多くの方法の中から絞りこんでいく作業は、私共医師にとっては、大変責任の大きい作業です。

診査にかける時間の何十倍も、診断と治療方法を見つけるのにかかります。

スタッフはナイチンゲールの気持ちになって患者さんに接し、私は男ですからナイチンゲールにはなれませんが
誠意をもって対応しています。

私の患者さんとの関わり方 その8.

ー 先生は私にインプラントを薦めないのですか? ー

昨日、患者さんから唐突に問われました。

この50代の女性は奥の歯を二本失っておられました。

血液検査からも異常は無く、別段、インプラント治療の禁忌の患者さんでは無かったのですが。

丁寧にブリッジを造れば、十分に永く快適に暮らせると私は判断したのです。

治療と云うものは、何かしら身体を犠牲にして成り立つものです。

インプラントは骨を削って、ブリッジは歯を削って成り立つ治療です。

歯を傷つけるか、骨を傷つけるかの判断を迫られた時に歯科医師は冷静に判断しなければなりません。

究極の方法を選択したならば、将来に予期しない事象が生じた時に対応が出来なくなります。

インプラント治療と云うのは最後の最後の砦であると私は思っています。

とは言え、私は毎日、インプラント治療に携わっていますが、殆どの患者さんは
先の治療が丁寧であったならば、
インプラント治療など、しなくても良かった症例ばかりです。

普遍的な日常の治療を慎重に丁寧にすることが、一番の信頼を得る方法と感じます。

日頃の丁寧なブラッシングを続けることも同じです。

そして、何よりの口腔の健康維持に大切なのは、医師と患者さん相互の信頼関係の構築だと信じています。

審美歯科 その1.

私は審美歯科とは標榜しておりません。

何故にイマサラ審美歯科と標榜しなければならないのかと常々感じていました。

歯科の治療で、綺麗にするのは当たり前だからです。

メタル.ボンドかオールセラミックスか等と比較している間は、審美歯科を語る資格はありません。

今、とても良い症例を手掛けています。

何年か前から治療を始めた女性の患者さんなのですが、歯列矯正、歯茎の手術などフルコースで頑張って、
インプラントはしないで済みました。

術前から治療過程を踏まえて、今年の大学での特別講義で、皆にお見せしようと考えています。

テレビ番組のビフォー.アフター位、唖然とするほどに美しく変わられた患者さんの口許に
さぁ、みんながどの様な反応をするのか!今から楽しみです。

勿論、患者さんも喜んでいらっしゃいました。

仮の歯を入れた後、

ー これが私? ー

細かな形態と色調についてはこれからですが、この部分は私に任せて頂こうと思っています。

単に白ーい歯にするのが審美歯科ではありません。

綺麗に仕上がったら御見せしたいと思っています。

私の患者さんとの関わり方 その7.

今朝の一番の患者さんは、87歳の女性です。

私の診療所へは17年前に、初めてお越しになられました。

上は総入れ歯を新調して、下顎側は歯周病の手術の後にブリッジを装着しました。

1年に4度ほど、お口の清掃のためにお越しになられています。

入れ歯も、当時と同じものを綺麗に使われていらっしゃいます。

お口の清掃は、歯科衛生士の宮田君が担当するために、
私は専ら、患者さんとの雑談に興じるだけです。

この様な患者さんが私の診療所は、とても多いのですが、皆さんが宮田君に決まって云う台詞があります。

ー この先生は昔はとても恐かったのよ!私なんか何時もヒヤヒヤしてたのよ!今は歳をとって丸くなられて、良かったね! ー

歳をとった方からの、歳をとっては余計じゃい!と思いながらも
皆さんが歳をとっても美味しく食べられるのよ!の言葉に安堵する私です。

入れ歯について その4.

昨日から入れ歯の治療を始めた女性の患者さんが、おもしろい事をおっしゃいました。

ー 普通の入れ歯の治療は、どうやってするんですか? ー

この患者さんは、既に他の医院で仮の入れ歯を造って貰って、それをお使いになられていらっしゃいます。

ー  私の作り方は普通ではありませんよ! ー

確実に申し上げられるのは、私の入れ歯の作り方は他の医院とは違います。
加えて、私は患者さんによって入れ歯の作り方を変えています。

それぞれの患者さんによって、お口の状態は違います。
また、患者さんによって、こだわる処も違います。

絶対に入れ歯と判らない様に造って下さいと、見た目を特に特にこだわる方から
発音を特別に気にされる方、違和感に特に敏感な方、それぞれです。

ですから、私が治療を開始する前に何度も何度も患者さんと会話をするのは
患者さんが、たとえ私には直接的に言わなくても、そのこだわり部分を見つけるためです。

変な?入れ歯を長期間使っていると、お口の粘膜が変形します。
噛み合わせも、本来の生理的な状態から狂っています。

その辺りを修正しなければ、良い入れ歯はできません。

仮の入れ歯を使って入れ歯の治療をする方法なのですが、その勘所は、私も狸オヤジの歳になりました。

秘密!秘密!です。

プロのピッチャーと同じで、変化球の多いのが職人の職人たる勘所と御理解頂きたいのです。

これからインプラント治療を受ける患者さんへ その17.

ブリッジよりも、入れ歯よりもインプラントが勝っていると云うのは誤りです。

ブリッジを、入れ歯をキチンと造れない医師に、キチンとしたインプラント治療が出来る筈はありません。

ブリッジや入れ歯の粗は、患者さんに直ぐに自覚出来ます。
ブリッジなら、食べ物が詰まりやすい、歯が浮いた様な感じがする。
入れ歯なら、外れ易い、痛くて噛めないと云った処でしょう。

対してインプラントは、その様な自覚症状がありません。
ですから、技術的に不備であっても、患者さん、医師共に気づかず過ごして仕舞う事が多いようです。

インプラント治療には2つの関所があります。

その関所の1つである外科手術にばかり、皆の関心が向いてしまっているようです。
外科手術は、当然の事ながら事故を回避しなければなりません。
これはインプラントだけの事ではありません。

インプラント治療の手術と云うのは、どちらかと言えば難易度は低いものです。

私は正直、インプラント治療の難しさとは、何十年も維持させる配慮を治療の中に封じ込む知恵に在ると感じています。

小さな小さな細かな配慮の積み重ねが、インプラント治療の成功への必須条件だと確信しています。

そのために、インプラント治療以外の虫歯の治療などの日々の治療を、より丁寧にする心がけが大切だと思っています。

知識と経験の積み重ねを大切に、それでも最後は私共のような仕事は、手指の器用不器用がものを言う事も事実です。

ですから、インプラント治療をお考えになられる時に費用や治療期間も大切でしょうが、それとインプラント治療の成功とは
別物である事は、認識して頂きたいと思います。

父息子

昨年の晩秋の事でした。

新潟に暮らす愚息とは月に一度、私が日本歯科大学の新潟校へと出向く一週間程しか会いません。

しかしながら親とは摩訶不思議な力を持つものです。
800キロも離れた越後の国に暮らす愚息の挙動は、全て把握出来るものなのです。

最近、不審な挙動を示す愚息を問い詰めると、ヤッパリ!

新潟駅の裏で捨て猫を拾い上げ、秘かに自宅に連れて帰って飼っている様でした。

扶養の身で在りながら、また扶養家族を増やしてどうするんだ!と叱ったものの、
私を自宅の玄関先まで迎えに出てきた仔猫の顔と泣き声に
捨てろとは、やはり言えなかった私です。

先月、新潟へ行った際に、私の書斎の床に敷き詰めたカーペットが
まるで時代劇に登場したるこじき、ルンペンの纏ったボロ筵の様な悲惨な姿に!

うにと名付けられた仔猫ちゃんの爪の餌食となった私の可哀想なカーペットでした。

この憎むべき爪を何とかせねばと、高松市の掛かり付けの獣医さんにお願いして、処置をしていただくために
うにちゃんは、車で遙々四国まで嫌々連れて来られる羽目となりました。

愚息には正月明けに、避妊手術は費用を送ったのですが、
何故か?うにちゃんにサカリの様子が!

やられた!避妊費用を猫ババされて、
可哀想な私は、避妊手術も二度取りされる羽目となりました。

とは言うものの、私も若い時分には同じような事をしたものです。

歯型を採る際に使うゴム製のカップを、実際には500円位なのですが、
歯科の事など全く解らぬ母親から50000円もせしめた事を今でも思い出します。

男の子とは、そう言うものと、身をもって知っているだけに、
愚息にも、つい甘くなりがちな馬鹿な父親の見本が私です。

父と息子とは、そう言うものかもしれません。

私の患者さんとの関わり方 その6.

長かった?ゴールデンウィークも終り、今日から通常の診療体制に戻ります。

私は正直言って、長い祭日は好きではありません。

其れは、私の様な手や指を使う職人にとって、毎日の仕事の中で得る感触が、長いお休みによって鈍るのでは無いかと不安になるからです。

ですから私は長い祭日を利用して、外科なり歯を削る治療のトレーニングを受けるようになりました。

寝ても覚めても歯科!

それほど迄に、歯の世界は興味深いものです。

私の診療所へとお越しになられる患者さんが、祭日が明けて今から又。

楽しみです。

歯に明け暮れていた父ですが、小さな孫のような娘達も職人修行?を満喫したようです。

ヤッパリ、血は争えないようです。

当医院にこれから来院する患者さんへ その6.

患者さんへの病状説明であったり、治療方法の説明は、私なりには精一杯、誠意をもって対応させて頂いています。

極力、専門用語は使わずに絵に描いて説明したり、私自身の撮影した写真を使ったり、本を引っ張り出してみたり、
考えられる限りの手段を駆使して、本当に判って頂きたいと願っています。

但し、私を悩ませますのは、現状の治療に明らかに手落ちなり手抜きがあったときです。

前の先生の治療を批判することは、人として私には出来ません。

しかしながら、その歯の再治療が必要とされる時に、患者さんへは前の先生の治療を悪く言わずに、どの様に表現しようか
言葉に詰まって仕舞う時、しばしばです。

その様な時に、つい心の中で、察して欲しいと願ってしまいます。

一昨日、初診でお越しになられた患者さんのレントゲン写真を診て、絶句してしまいました。

他の歯科医院にてインプラント治療をお受けになられておられましたが、
インプラントと噛み合う相手の歯の根が折れているのが歴然であったからです。

これではインプラントを入れても、噛む相手が折れていればインプラントは役にはたちません。

反対側の歯を診ても、根の先の骨の中に膿が貯まって、このままでは総崩れの状態です。

治療されていたのは、たった一本のインプラントでしたが、永く持つとは到底思えません。

歯磨きも充分にはされておられない様でした。

耳障りの悪い事も、時には申し上げなければなりません。

決して悪気は無く、永く快適な咀嚼機能を営んで頂きたいと願っているからこそ、
避けては通れない関所があるのです。

歯科の治療は、本当の意味でのプラーク.コントロールが徹底していなければ良い結果は生みません。

いくら審美修復云々と云っても、根本的治療が丁寧に出来ていないと長持ちはしません。

どうか、その辺を一緒に御理解頂きたいのです。まず

私の患者さんとのかかわり方 その5.

昨日は実に興味深い新患の患者さんがお越しになりました。

つい最近、他の歯科医院に於いてインプラント治療を終わられた方でした。

インプラント治療は上の小臼歯に為されておられました。

レントゲン写真では、綺麗に埋め込まれており、前後の歯の根の治療も
歯科保存学の専門家が施した治療では無いことは明白ではありましたが、誠実にされており
久し振りにマトモな?治療に触れて、爽やかな心持ちとなりました。

患者さんからの聞き取りから、全身検査は為されておられなかった様でした。

インプラント治療に於いて、手術はあくまでも人工歯根と云う異物を骨に埋め込む手段にしか過ぎません。
インプラントが、骨の代謝の中で今後も身体と共存していくために、私の方で全身状態を把握しなければなりません。

その旨をご説明申し上げて、血液検査を受けて頂きました。

お口の中の状態を簡単に拝見させて頂きました。

恐らく、治療された先生は患者さんのご負担になられる費用の事を気にされた痕跡がありました。

これが吉と出れば良いのですが‥‥。

気になって、治療された先生の経歴をホームページで拝見したら、口腔外科出身の先生でした。

治療の痕跡から、この先生のお人柄が誠実である事は容易に理解できますが、
一口腔単位の治療については、未だ勉強の途上にあることが伺えました。

これから、この患者さんには、もっとご自身の口腔に関する興味をひかせる手当てが最優先の事項となります。
これが臨床医の醍醐味であります。

私の歯科医人生が、インプラント治療でありました。

インプラント治療が多くの患者さんの役に立つことを願ってやみません。