月別アーカイブ: 2014年6月

入れ歯について その5.

一般の方が思っておられるよりも、歯の型を採る治療過程は技術的に難しいのです。

削った歯の型を採る際には、削った箇所を正確かつ精密に写しとらなけらばなりません。
これが出来ていなければ、ピッタリと適合した被せものはできません。
被せた境目から虫歯になったり、被せものの境目が臭いのは、正確な歯の型採りが出来ていなかった証しです。

入れ歯を造る際の型採りは、被せものを造る際の型採りとは全く違う意味合いをもちます。

入れ歯は、歯が無い部分にいれる人工物です。
ですから、型を採る部分には歯がありません。

口の中には、絶えず動く舌が中央に鎮座して、頬、唇が外側を覆い被さっています。
この頬、唇も絶えず動く筋肉で出来ています。

入れ歯の下の粘膜も、ブヨブヨしています。
歯のように決して硬い組織ではありません。

入れ歯を造る治療は、この様に動きまわる粘膜や筋肉で囲まれた難しい環境でおこなわれます。

ですからピッタリ入れ歯をお目にかかる機会が少ないのでしょう!

歯科医師が、造るのが難しい入れ歯より楽に噛めるように出来るインプラント、しかもインプラントは高額ですから、
インプラントに走るのは当たり前かもしれません。

この私もインプラント治療に携わって26年になります。
確かにインプラントは優れた治療方法ですが、決して万能な魔法の治療ではありません。

これは上手!と思えるインプラント治療をしている歯科医師は本当の処はとても少ないのです。
最近はホームページが普及して、様々な歯科医院の治療の実例が閲覧出来ます。
内心、本当にこんなんで良いと感じてるの?と思えるものの数の方が多く、
症例写真よりも、いったいどういう人なんだ?と歯科医師の顔を眺める時間の方が長い私です。

入れ歯の治療の際の型採りは、、型を正確採ると云うよりは、型を造ると表現した方が正しいでしょう!
入れ歯を取り囲む周囲の筋肉や粘膜の動く様子の形を造り出すと言った処でしょうか?

入れ歯が下手な歯科医師のインプラント治療は、たかがしれたものです。
大掛かりなインプラント治療が必要な患者さんは、インプラントを入れる前に
仮の入れ歯を造って貰えば良いでしょう。

この際に、簡単に完成させる歯科医師ならば、インプラントを委せるのは危険でしょう!

入れ歯の治療は、歯科医師の技術と知識の結晶と賜だと思います。

これからインプラント治療を受ける患者さんへ その23.

インプラント治療は、今では珍しい特殊な治療法ではなくなりました。

私がインプラント治療に携わって26年になりますが、
そのころから数えて、既に第3世代位の進歩したインプラントが市場に共されています。

インプラントメーカー各社が、それぞれに特徴を持たせた多くのインプラントが市場に出回っています。

インプラント材料については、その研究も行き着く処までいったかの完成された程にまで進歩して、
現状、歯科の研究の関心は、インプラントから、歯の再生へと移り変わってしまっています。

しかしながら、インプラントを取り扱う側の歯科医院側の体制の方には、未だ旧態然とした感を感じざるを得ません。

だからこそ、医院によっての技術の差も大きくなっています。

歯の神経を採る治療、入れ歯を造る治療など、歯科の基本的な治療もキチンとなし得ない歯科医院が
インプラント治療を行った処で、所詮キチンとなされる筈はありません。

インプラント患者さんの集客のために、やたらとハード面ばかり強調して、他の歯科医院との区別化をはかる処は
案外と基本的な肝心処が欠如されている場合が多いようです。

歯科の治療の成功の第1の絶対条件は、治療手順をステップ.バイ.ステップに確実にふんでいく事にあります。

そのような事をふまえると、安易に短期間でのインプラント治療や短時間でのインプラント治療は慎まなければなりません。

包括的医療 その2.

歯科医学と云う学問も、細かく切り刻むと沢山の専門分野に分けられます。

しかし、専門分野を追求していくと、結局、他の分野にまたがって手を出していかないと
解決できないので、行き着く処、歯科医学はひとつと感じるようになりました。

更に発展させて、診察する患者さんの体質や、基礎疾患などをお持ちの際には、
当然の事ながらそれらに対する知識も必要となります。

特に、高齢化時代に突入した現在においては、毎日の診察での高齢者の割合も増加する事でしょう。
現に、私の診療所への患者さんの大半が高齢の方で、皆さんがなんらかの薬なり、他科での治療を受けてらっしゃいます。

私はインプラント治療を中心に診療生活を送っています。
しかし今後は、部分入れ歯や総入れ歯治療が多くなってくると思っています。

寝たきりになった患者さんのインプラントが、長期に、そして快適に長持ちする条件を満たす治療は、
とても制限があります。

無理してインプラント治療をするよりも、部分入れ歯や総入れ歯にしたほうが、
口腔衛生管理がしやすく、かえって噛める場合も少なからずあります。

私は、専門分野のための専門治療よりも、今、患者さんの口腔と取り巻く全身、そして生涯にわたる時間の流れまでも
考慮した、包括的医療の必要性を強く感じます。

私の仕事 その6.

綺麗な診療所で、インプラント治療をしてる歯科医師だから、
さぞかしプライベートでは優雅な生活を!と思っておられる方も多いのかもしれません。

優雅で楽しい生活を送っていたら、仕事になりません。

眼や指先、腕がとても疲れる仕事です。
仕事中は、気が張りつめています。

正直云って、仕事が終わると、頭の皮が突っ張って、眼もジンジンしています。

患者さんが居るときだけが、仕事ではありません。
カルテとにらみっこしながら治療計画を立てたり、
文献を読んだり、論文を書いたり‥‥。

それでもって、眼を冷やしたり、腕や背中のマッサージに行ったり、
歳をくった分、身体の手当てが必要になりました。

新しい材料は、自身の手で実験して確かめてからでないと患者さんに使えない質なので、
それにも時間がかかります。

私は、少しでも良いコンディションを維持して長く臨床を続けたいと願っています。

そのために費やす労力は、とても孤独な自分との戦いになります。

私は、なりたくて歯科医になれた幸運な人間だと感謝しています。

ですから、良い仕事をするための労力は惜しみません。

仕事が終わって盛り場へ、休日には歯医者仲間とゴルフに興じ等は
ついぞ縁の無い四半世紀でした。

でも、居ますよ!トレンディドラマのような生活を送っている先生は。

但し、見かけとは違って、そういう先生の治療は、見てられません!

世の中とは、そう言うもんです!

どんな仕事であれ、人生と云う短い時間のなかで
仕事をキチンと身につけようと願うならば、
余所見する余裕など無いのでは?

但し、一心不乱に向き合える歯科と云う仕事と出会えた私は、
この上ない果報者だと、日々感謝し、歯と向き合っています。

私の仕事 その5.

近代日本の哲学者である内村鑑三の遺した言葉の中に、
歯科に纏わる次のようなものがあります。

歯科医療は愛の仕事である。
病める人には労りの気持ちを、
共に働く人には感謝と労いの言葉を。

私の診療所の、いつも私が座る椅子の横には
この言葉を壁に掛けています。

私の仕事は、手作業の専門職ですから
常に自己研鑽に努めなければなりません。
それが結果として、患者さんのためになれば幸いですが、
自己研鑽は、プロとしてのプライドの為せるものだと思っています。

私の仕事にとって大切な事は、第1が自己研鑽であって、自己主張ではありません。

但し、幾ら腕が良くても、心のない人には良質な医療はできないと思っています。

厚みのある人、幅のある人たるための時間の過ごし方は、
人の身体を預かる仕事につく人間にとって、
とても大切な条件だと考えています。

これからインプラント治療を受ける患者さんへ その21.

超高齢化時代に突入した我が国です。

先日、日本歯科医師会新聞に興味深い記載がありました。
現状、日本歯科医師会の会員のなん4分の1が65歳以上であるとの事です。

私は、この4半世紀、インプラント治療に携わってきました。
この10年は、毎日、インプラント治療をしています。

私が携わった患者さんも、今では随分と高齢になられています。
身体が不自由になり、寝たきりになった方も増えました。

私は自分の患者さんに限って、往診をしています。

自分の仕事の経過を長く拝見したいのと、
ありがたい事に、私以外に口の中を見せたくないと仰って下さる患者さんが多いのが
私が往診をする大きな理由です。

私なりの訪問診療のスタイルも、やっと完成したように思っています。

皆さんが、ありがたい事に、実費での費用負担してくださり
私の満足する手当てが出来ていると思っています。

以前、施設に訪問診療に出向いた時期がありました。
その際には、私の患者さん以外の方ばかりで、
正直云って、私は途方にくれました。

私は、歯科治療こそ、先の先を見据えて診療計画を建てて治療を行わねばならぬ事を
この時ばかりは、実感したものです。

インプラントは直接に圧力がかかっていなければ、骨との結合が壊れていきます。

不幸にして脳疾患等に罹患して、思うような咀嚼が出来なくなったときに
次の手順を準備しておく必要性があります。

私の診療所へ、初めてお越しになられる患者さんの口の中にも
インプラントが為されているのも珍しい事ではなくなりました。

が、悲しいかな!
それらのインプラントの全てに、もしもの時の配慮がなされておりません。

同じ患者さんを、ながーく見続ける事は本当に大切です。
これ等から得た情報は、どんな教科書よりも為になることを実感させられます。

今の見掛け、今の快適な咀嚼は勿論のことながら、
将来のもしも!への配慮も、インプラント治療には絶対に必要な事です。

歯科治療において大切な事 その4.

日進月歩の目覚ましい歯科医学です。

私達歯科医師は、絶えず新しい知見を修得しなければなりません。
また、過去の旧い文献についてもキッチリと読み込んで、
知らなかったでは済まされい人の身体を預かる仕事です。

悲しいかな!指先の仕事です!
器用な人と、そうで無い人の差は歴然です。

手先が器用な人が10人に一人。
それに、絶えず勉強熱心と云う条件を加味すると100人に一人。
加えて、芸術的センスを更に加味すると1000人に一人。

このように考えて観ると、良い歯科医の最低条件を満たす歯科医は、とても少ないのが現状です。

本当に悲しいかな!歯科の仕事は、指先の器用でないひとは気の毒としか言いようがありません!

但し、指先の器用 、不器用は簡単に見分けられます。

私達は専門家ですから、治療を観れば、誰が上手くて、誰が下手か、直ぐに解ります。

でも、患者さんには判らないですよねって?

解ります!

良い事を教えましょう!

不器用な歯医者は整理整頓も下手!

診療室に入った瞬間に解ります!

直感的に、整然としていないと感じられる診療所の歯科医は、
並みか、それ以下でしょう。

勉強している歯科医が、講習会に頻繁に参加している歯科医とは限りません。
この辺りの見極めは、かなり難しいと思います。

私が患者さんの立場であったならば、
絶対に器用な歯科医を選びます。
その上で、センスをチェックして、
次に薬や材料的な話のなかで
どれ程掘り下げて追求しているのか試してと云う手順でしょうか!

今日、このような話題に触れた訳は、
余りにも不器用な仕事が多いのに触れての、私の憤りからでした。

これからインプラント治療を受ける患者さんへ その21.

私の診療所には、沢山の種類のインプラントを準備しています。

例えば、大型の四駆の車で狭い町乗りは不便でしょう?
高性能のスポーツカーで雪の広野を安全に走行できますか?

車には用途があるように、インプラントに関しても同じです。

特に見た目重視の症例には、
あるいは、噛み合わせの力が特別に大きい症例には、
骨が軟らかい症例には、等など
私は毎日インプラント治療を25年以上、携わってきました。

私はインプラント治療は、インプラントの種類の選択はとても大切な成功の条件だと考えています。

私の診療所は、多くのメーカーの協力があってと感謝しています。

私はブランド信仰は無意味だと思います。

患者さん、おひとりおひとりに適したインプラント治療を第1と考えるならば、
医者は、無意味なブランド信仰を棄てるべきだと思っています。

私の仕事 その4.

手術前の患者さんは、みんな、とっても緊張されています。

当たり前の事です。

手術が終わった患者さんは、力みが弛んだのか、みんな、ホッとしたお顔をされています。

良かったね!と一緒に嬉しくなってしまいます。

噛めるようになった患者さん、綺麗な口許になった患者さん、
そこから患者さんは私に親しみを持ってくれる様です。

治療が終わってから、親しみを持って頂いても、治療の間はずっと恐い先生かと思って緊張していましたと言われたら、
なんか損した気持ちになってしまいます。

少しの異常をも見落としてはならないと云う気持ちが、患者さんに伝わるのかもしれません。

それでも古くからお越しになられている患者さん達は、スタッフの宮田君に

ー あなたは良い時に勤めたわよね!最近は先生は歳をとってまるーくなって。昔は恐かったなんのって! ー

私を前に言いたい放題で‥‥私の悪口が続きます!

最近の歯科医は医者じゃないみたい!と私に言った患者さんがいらっしゃいました。

大阪の心斎橋にナチュラと云う美容院があります。

オーナー.スタイリストの後先生は、私でさえも恐い!

沢山の芸能人の髪を手掛けていらっしゃいます。

別に先生が怒りまくる訳ではありません。

いつもニコニコとされて応対して下さいますが、でも恐い!

ハサミを持つ姿から、気が放射状に出ているのが伝わってきます。

先生は、数少ない、稀に観るスタイリストであることが一目で解ります。

後先生のお陰で、私のスタイリストへの評価は一変しました。

先程の患者さんの言葉ではありませんが、どうも最近の歯科医は、悪い意味での美容院化しているように思います。

美容院には美容院としてのアイデンティティがあります。

同じ審美を扱うにしても、歯科と美容とは立ち位置が全く違う事に気づかなければ、
歯科は早晩駄目になるでしょう!

治療の間は恐いと思われても、治療が終わってから幸印象?だからこそ、
私の診療所は、紹介患者さんでイッパイで、ありがたいと本当に感謝しています。

時には、患者さんにチクりと嫌なことを云う私ですが、申し訳ありません!

悪気は全く無いのですが、隠す事の出来ない性格、腹にイチモツ持てない性格なので。

本当に心の底から、善かれと思って言っているのです。

私の仕事 その3.

インプラントをしたいのですが‥。

セラミックの歯で綺麗になりたいのですが‥‥。

ピッタリ合う入れ歯を造って下さい!

私の診療所にお越しになる患者さんの主訴は、こんな処でしょうか?

で、直ぐにその治療にかかれる患者さんさんは、殆ど居られません。

と云うのは、皆さん、料理と同じで下準備が必要なお口の状態だからです。

歯周病だったり、根の治療が必要だったり、粘膜が痛んでいたりで‥‥。

先ずは確りとした基礎の治療が出来ていないと、良い結果は生まれません。

治療をするからには長持ちさせたいと思うのは当たり前でしょう?

決して眼には見えなくても、見えない処だからこそ、丁寧にキチンと治療をしたいと思っています。

見映えばかりを繕って、後になってから床が傾いた欠陥住宅のような治療だけは許せません!

愛想を云う事はありませんし、白黒ハッキリと云う性格の私です。

でも、職人であるならば、大切なことは仕事の内容だと思っています。

私の診療所へお越しになられた患者さんとは、長がーくお付き合いしています。

途中で来られなくなった患者さんも、確かにおられます。

が、殆どの方が、10年位経ってから、申し訳なさそうに戻って来られます。

私は、其れで良いと思っています。

他と比べてこそと云う事もあるからです。

また、ひさしぶりに視る自分の仕事の結果を新鮮な気持ちで評価できるからです。

毎日、同じことの繰り返しの中で、確かに自分の仕事の進歩と変化を感じます。

上手になりたい!上手になりたい!と願って歯に向かい合って来ました。

でも、マダマダ満足していません。

だからこそ、丁寧に丁寧に、治療しなければと、力んでしまいます。

永年、使って貰って新品の頃の綺麗さは失われていても、患者さんの口の中で
お役にたっている入れ歯やインプラントに、私はありがたいと感謝しつつ、定期検査をしています。

いつか倅か娘、あるいは他の歯科医が私の仕事を引き継いでくれるでしょう。

その時に、キラリと光るなにかを、歯のなかに自己主張として遺しておきたいものです。