日別アーカイブ: 2014年7月2日

悩む私

先日、とある鮨屋のカウンターの隅で独り時間を過ごしていた時の話です。

歳の頃は30代後半から40までの女性が、慌ただしく入って来ました。

私の隣の予約席と書かれた処に案内され、席に着くや否や、おもむろに煙草を取り出し麦酒の注文を。

私も煙草をたしなみます。
が、料理屋、鮨屋のカウンターでは遠慮しています。
会席の場であっても、料理の味わいを楽しむ為に、煙草は料理の後で。
それは、料理人への客の礼儀だと思っています。

この店の鮨は、店主が客に出すネタの種類、そしてネタの順番を決めています。
こうして食べて頂く方が、さらに美味しいと信じる店の店主の考えに賛同する客に支えられるこの店の特徴です。
ですから、この店には値札はありません。
所謂、時価の店と云う処でしょうが、この店は予め一つしかないコースですが、御一人様幾らと値段を決めています。
コースに出されたネタが美味しくて、更に追加で注文した時には、その追加分は時価にて請求されます。
これが、この店の特徴です。

この女性客。
店主が出した鮨ネタに、突然文句を言い出しました。
出されたコハダが苦手だと云う内容で、店主が客の好みも考えずに鮨を出すのなんぞ思い上がりも甚だしいと云う内容でした。

店主は確かに、苦手なものはありませんか?と初めての客には問いかけます。
この女性客にも確かに問うておりました。
但し、問われた方が、カウンターで片手に携帯電話、もう片方に麦酒のグラス、オマケにカウンターの上の灰皿には火のついた煙草の煙が。
これでは店主の言葉など、耳に入る筈はありません。

気の短い私なんぞは、内心胸くそ悪い想いをこらえて、コハダ嫌いが江戸前の暖簾をくぐる資格など無い!などと思いながら
このヤリトリに像の耳となっておりました。

この店の店主も、本来は気の短い質だと思います。
但し、周りのお客に不愉快な思いをさせてはならじの一念と、内心この小娘ふぜいに対等に渡り合ってはならぬの抑えに抑えた感情で
静かに対応されておりました。

しかし、この女性客はいっこうに責めの言葉を止めません。

このヤリトリに終止符をうったのは、カウンターの私の反対側隅に座ったある客の言葉でした。

ー お嬢ちゃん、回転寿司でも食って来いや!あぁ、お嬢ちゃんはお金もちだったな!ホテルの鮨屋でも行って講釈垂れて来いや!
  親父さん、お嬢ちゃんの勘定は俺に付けといてくれや! ー

ゆでダコの様に紅潮した顔で、勘定位は自分で払うと云うこの女性客に、

ー 御勘定は結構でございます ー

と静かに頭を下げて見送る店主でした。

大きな音をたてて出ていったこの女性客が見えなくなった瞬間に、

ー 大変ご迷惑お掛けしました ー

ニヤリと笑い、皆にニコッとした店主に、ほとほと感心する私でした。

と云うのも、私の診療所へ来られる患者さんのなかにも、時にこの様な方が紛れ込んで来ます。

むかっ腹たつのですが、大人気ないと自身を抑えて対応しても、こういう方は一向に気がつきません。

私は本当に良い患者さんに恵まれています。

そのなかの、この様な変な人に対する対応についての悩みは付きまといます。

悪い医師も多いが、悪いお客、患者さんの類いも多い昨今に、これからの日本はどうなるんだろうと悩む私です。