月別アーカイブ: 2014年11月

新人時代を思い出し

高松市で審美学会が開催されるのに伴って、ウチの医局員達が総出で来讃します。

東京校と新潟校揃ってのイベント故に、賑やかな週末になりそうです。

先だって、新海教授が今日の夕刻に到着するので空港まで、お迎えに伺うことになっています。
私が医局に入った当時に新海先生は、医局長だったと記憶しています。

私が今、細かい性格のように言われるのは、間違いなく、この新海先生のお蔭?だと思います。

学生気分の抜けきれていなかった当時、私は先生の細かさに反感の気持ちさえ持ちました。

ただ、保存科の医局員は概して細かかったですが、新海先生の其れは特に顕著だったと記憶しています。

歯科の中で一番の細かさを要求される分野が保存学ですから、其れは仕方の無いことかもしれません。

このような環境の中で、歯科医師としての第一歩を歩めたことは、今となっては幸せな巡り合わせと云えるでしょう。

皆が私の診療所の見学に来られるそうです。

昼からは新人時代を思い出し、掃除に明け暮れそうな模様です。

歯の治療の本当の話 その1.

人の身体の中には、多くの細菌が生息しています。

これは別段驚くようなことではありません。

腸内細菌が消化に役立っているように、

細菌イコール不潔と決めつけるのは大きな間違いです。

口の中にも多くの細菌が生息しています。

この細菌イコール虫歯の原因と決めつけるのも誤りです。

何事もバランスの上で成り立っています。

なんでもかんでも除菌と云う考え方には大きな落とし穴が在ると言って良いでしょう。

歯の神経を採ると歯が弱くなると言う考え方も、これと全く同じ事です。

どの様な状況下のもとで、どのように神経を採って、歯の根をどの様な処理を加えたのかで、
神経を採った歯の寿命は大きく異なります。

歯の根の中を完全に無菌化することはできませんし、神経の残骸を全て取り除く事も不可能です。

歯科保存学の中に歯内治療学と云う専門分野があります。

これは歯の神経を採る治療についての研究と診療を主に受け持っています。

この学問的見地に立って、的確な治療を、正しい手技に則り、
歯科医の手が本当に器用であれば、神経を採った歯も長持ちします。

東京の有名な鰻職人である野田岩の店主の言葉ですが、
職人が自分の腕の悪さを鰻の素材のせいにする傾向があるが、そのような事を言う前に、自分の腕を研け!

職域が違っても、正に的を得た言葉だと思います。

人の身体の中は、生き物故の様々なバランスの上から成り立っている事を噛み締めて、
私共歯科医は歯を噛み締めるだけではなく、
人の身体の重さを噛み締めて、
安易な言葉を吐くものではありません。

最近の歯科のホームページを観るに忍びない想いに、
歯医者の仕事はインプラントを入れるだけではなく、
歯を残してナンボ!と思うのは私だけでしょうか?

インプラントの業界に於いて、メジャーなメーカーや、昔からキチンとしたインプラント治療を実践してきた本当のインプラント専門医であれば、
私の名を知らぬ人は先ずは居らんでしょう!と何時もの私らしくなくハッキリと、これは言わせて頂きますが、
インプラントは良い治療です。

しかしながら、インプラント治療だけが良い治療ではありません。

歯科医の仕事は、患者さんのためにあると思ってます。

歯科医の使命

たまには歯の話題にも触れたいと思います。

歯科と言えども、教育や研究の現場に於いては幾つかの専門分野に別れています。

大雑把に云うと、

口腔外科 :口の中の腫瘍などに対する外科治療、顎の骨折、抜歯を主に行います。

小児歯科 :成長期にある小児の虫歯の治療や予防処置を主に行います。

矯正歯科 :歯並びの治療を主に行います。

保存科  :虫歯の治療、根の治療、歯槽膿漏の治療などの歯や歯茎、歯槽骨を出来るだけ残す治療を行います。

補綴科  :被せもの、ブリッジ、入れ歯などの治療を主に行います。

放射線科 :画像診断や腫瘍に対する放射線治療を主に行います。

麻酔科  :手術の時の全身麻酔やペインクリニックを主に行います。

大学卒業後に、大学病院のそれぞれの専門科に残って専門分野の勉強する人は1割、2割位です。
後は、開業医に勤務しながら総合力を身につけるべくトレーニングを受ける訳です。

どちらの道が適切なのかは、私には申し上げる立場にはありませんが、
長い臨床生活が続く訳ですから、若い時分にはジックリと1つの専門分野に取り組んで、
そこから徐々に技術的な幅を拡げていく方が、より深い洞察力が身に付くと思います。

今流行りのインプラント治療は、上の何れかの専門分野に属する治療ではありません。
口腔外科、保存科、補綴科、麻酔科、放射線科などにまたがっての知識、技術を必要とします。

私は大学卒業後は保存科の大学院に入学しました。
歯科医人生の第一歩は、歯科保存学から始めたわけです。

ですから、その影響は大きいと思います。

私の治療は全てが歯科保存学的な見地から成り立っていると言って良いでしょう。

入れ歯の治療に於いても、骨が痩せない配慮を第一として行っています。
インプラントにしても、残った歯との調和を優先しています。

歯の神経を採ると歯が弱くなると、一般的に言われている様ですが、
これは全くの誤りでしょう。

歯の神経を残す努力は絶対に必要です。
先ずは、これが最優先するべき姿勢です。

しかしながら不幸にして神経を採らざるを得ない状況に際しては、
歯科保存学的な適切な治療を行うことで、歯が長持ちするのは事実です。

インプラントのための歯科治療ではありません。

歯科治療の使命とは、健康で快適な咀嚼機能を長く営めるように、同じく美しい口許を維持できるようにと
私は結論づけています。

そのために、私共歯科医は居る訳です。

末の娘の誕生日

末の娘の誕生日です。

45も過ぎて、また子供を授かるとは想いもよらずといった心持ちでした。

倅と書店へと出向き買い求めたる姓名判断の本を前に、アレヤコレヤと悩んだ末に、
最終的にこの娘の名前を決めたのは、倅でした。

倅とは所謂、腹違いの妹です。
まだ小学生の高学年であった倅は、自身が始める新しい生活の中で、これも又、新しく生まれた命に希望を託したのだと思います。

愛奈(マナ)と云う名前です。

仕事が終わってから直ぐに、海の向こう側の川崎医科大学病院まで車を飛ばす間の、
倅と二人の幼い娘のヤリトリを今でも鮮明に覚えています。

倅と幼い二人の娘が、神妙な顔つきで手を消毒し、新生児室へと入る後ろ姿が瞼に焼きついています。
赤ちゃんと呼ぶに相応しいこの赤子を、最初に恐々抱いたのは倅でした。

6歳になりました。

色々な事がありました。

家族それぞれの立場で、皆が一生懸命だったのだと思います。

私にとっては、私と共にできる時間が一番短くなるであろうこの娘が、
私とソックリの性格を受け継いでいると思っています。

気が短く、癇癪持ちで、それで恥ずかしがりやの甘えん坊。

この娘が大きくなった頃に私には、どれ場の力も残ってはいないと思います。

其れが判るが故に、この娘の将来を是非に観ていたいと想う気持ちが、私が変わったと言われる所以かもしれません。

子育てで逆に、親たる私が育てられているのを感じています。

新しいホームページの進行状況

もっか新しいホームページを製作中です。

私は今のホームページもスッキリしていて気に入っています。
製作者である、香川県のタウン誌の育ての親とも云える香川こまちの山田さんに感謝しています。

私はある意味、自分を客観的に観れていると思っています。

私の仕事は、所謂、玄人受けと云うか、歯科の業界人の評価は良いと思っています。

が、地元である香川県での一般の方からの知名度は低いと、自己評価していました。
私は、ある意味の宣伝活動を積極的に行う歯科医を軽蔑していました。
そう言った意味で、ホームページでの広報活動には消極的だったと思います。

ですが、時代は変わりゆくモノ。
ホームページは一種の名刺がわりの意味合いを持ったと思います。

名前は人を現すと言います。
ホームページも、その観せ方や表し方で、その医院のセンスなり品位が伺えると思うに至ったのは、
他の医院のホームページを真面目に観察するようになったからです。

今のホームページは、そのまま現状残す積もりです。
香川県を最も熟知したプロの手によるモノですから。

新しいホームページは、実際に私の手によって治療を受けた患者によって造って頂いているモノです。

私は所謂、広告業界での著名な方は大勢、存じ上げておりますが、
私は好き嫌いがハッキリしています。
過去の業績で飯を食っている人に、仕事をお願いする気持ちにはなりません。

そういう意味で私は、香川こまちの山田さんは、何十年もネタギレすること無く走り続けられておられる姿に
尊敬の念を抱いていますから、私がお願いすることは自然の成り行きとも云えるでしょう。

新しいホームページの製作者は、面白いの一言に尽きると思っています。
この方は、これから出てくると思っています。
恐らく私の直感は当たると思っています。

インプラントはもちろん、歯周病に対する手術、噛み合わせ治療、保存治療、殆どのジャンルの治療を
実際に受けられた私自身の患者さん。
しかも、私はこの方のプロとしての力を信じています。

こう言う条件の揃った機会は、大変珍しいと思っています。

今日、凡そを確認しました。
お願いして良かったと思っています。

12月の半ばにアップ出来ると思います。

時はかくも速く過ぎ去るのに

いち日、一週、ひとつきが過ぎるのが余りにも速くて、ついていけない自分をもどかしく想います。

この一年、ナニかを自分史に遺せたであろうかと振り返って観ても、
遺せたと云うよりも、むしろ失なったモノの方が多いと感じています。

なにかに書かれているのを見たのですが、
私どものような専門職に就く人間が、コレが得意です!等と言い出したら、其れで終わり!
正しくよく言い当てた言葉です。

私も未だに、自分の仕事に満足が得られません。
此処を治そう、彼処も駄目だと、自分に駄目だしばかりの毎日です。

患者さんに対して、心底から喜んで、安心して貰いたいと云う気持ちばかりが先走りします。

結局は、コツコツと日々、積み重ねて行くしかないのですが、
先程の、時間の過ぎる速さに追い付いていないのです。

ある意味退屈

この歳になったからと云う訳ではないと思います。

他の人であればドギマギする事でも、私はあまり気にしません。

自分の中での価値観と云うモノがキチンと私なりにあって、
その価値観がどうも他の人のものとは随分と大きな開きが在るようです。

ですから他人目にすれば大したことで無い事象であっても凄く気にかかり、
逆に普通の人間であれば動転する様な出来事に遭遇しても平静を保て、
その成り行きで腹の座った人だと言われても、
当の本人にとって頓着ない事なので何と返して良いのか解らない、
その様な事が多いのです。

ある意味私のような仕事をしている人間は人気商売ですから、
痩せ我慢で人様の前に自分を曝している訳です。

そういう暮らしを何十年と過ごしているウチに
其れが知らず知らずの内に身についてしまうと云う事も在るのでしょう。

ただ診療所の中だけで1日の大半を、口の中だけ診て暮らしている人間ですから、
見識が広い筈もなく、専門バカですから、
何事にも鈍くなってきたのかもしれません。

先日も、匿名で意味不明の手紙を受け取りました。
親切めいた内容でしたが、何が言いたいのか皆目解らないので、
スタッフや家人に見せたら処、二人ともこの手紙の主は頭のオカシイ人物だと恐れ怯えて、
挙げ句は警察に届けようと二人して言う始末。

元々、匿名で出すと云うこと自体でマトモに受けとる気持ちにもならず、
と、言ってやはり自分の仕事の癖がつい、顔をもたげてしまいます。

歯科医はジックリと観察する野性動物のような習性を身につけます。

宛名の筆跡に、閃き、物持ちの良い私は、ゴソゴソと整理棚を漁り、
二人の前にポンと一枚の紙切れを放り投げたのです。

書き癖を無理して治して書いているモノの、完璧に治しきれるモノではありません。

あっ、同じ字です!と言われても、
何を今更気づいてるんだぃってなモノで、鈍い人を羨ましく思います。

人間と云う生き物は、その産まれや育ちで、様々な挙動を示します。
なにかを為すのに、全てに訳があるわけではありません。

此方に他意が無くても、受け取り様は人様々です。

歯だけで精一杯である私は、イチイチ暇に付き合う余裕はある筈もなく。

この意味不明なる手紙も、私の整理棚にしまわれたのです。

若い時分であれば、どの女であろう?と、口から心臓が飛び出す想いを味わったかもしれませんが、
残念ながら、枯れたるが現状の私は、枯れてはいなかった頃が、妙に懐かしく思うのです。

しみじみと

新潟での私の住まいは、信濃川に架かる萬代橋のすぐ袂にあります。

毎日、この橋の姿を仰ぎ、川からの風を全身に受けながらの散歩が、私の楽しみであります。

散歩の途中の本町人情横丁にある石山魚屋から、この季節になると、私は鮭を取り寄せます。

昨日、高松市の自宅に届いたる鮭を観て、冬がやって来たのだと感じました。

毎年の事であるので、魚屋の親父さんは綺麗に切り身に処理して、小分けで真空パックに入れてくれてます。

先日、岡先生から頂いたホカホカのご飯を、この新潟の村上市の三面川を登ってきた鮭で、
三杯もペロリと平らげてしまいました。

人の幸せと云うモノは、こういう時に在るものだとしみじみ実感しつつ、
鮭の頭をぶつ切りの大根と濃い口醤油と酒で煮込みながら、
明日の夜は久保田の封を開けようと、良い気持ちで床に就いたのです。

数ある中で

私の新潟贔屓は筋金入りですので、私の新潟自慢を聞き飽きたかもしれません。

新潟と云えばお米。

コシヒカリとは何と良い響きある名前でしょうか!

讃岐でも店先で、新潟県産コシヒカリをよく目にします。
私は其れを選んで購入していました。

先日、日本歯科大学の新潟校に【諸橋米同好会】なるものが在ることを知りました。

大学で生物学を担当されておられる岡准教授からの贈り物として手にしたる米の美味しさにビックリした私です。

旨い鮨屋や料亭でのご飯の美味しさの感動が、自宅で味わえるとは思いませんでした。

造り手である諸橋さんと云う方の大地への愛情が確りと伝わってくる感動のお米です。

そもそも私のような歯科医も、ある意味モノ造りの職人です。

相手に情熱の伝わる仕事をせねば!と再認識させられた良いお米でした。

数ある中のコシヒカリ。

そのコシヒカリの中でもとびきり光る諸橋さんのコシヒカリのような仕事をせねば!と。

岡先生から、本当にありがたい仕事への活力を頂きました。

新潟からの届きモノ

新潟から診療所へと大きな小包が届きました。

さて誰からの荷物であろう?と荷札をのぞき観ると、
日本歯科大学で生物学を担当されておられる岡准教授からのモノでした。

内容.米と記しされているのを観て私は、さぁ旨い米が食えるぞ!と、
歓び勇んで、この大きな荷包みを抱え込んでウチへと持ち帰りました。

先ずは米を神棚にお供えして、それから急いでご飯を炊いて仏様にお供えし、
そんでもって確りいただこう!とハヤル気持ちを押し殺し、
段ボールの蓋を開いて目が点になりました。

茶色い!

眺め回したる私は、この時にこの茶色いモノが精米前のお米であることに初めて気づいたのです。

坊っちゃん育ち?の私は、精米前のお米を実際に視たことがなかったのです。

岡先生からのお手紙が添えられていました。

手間はかかるが、その方がより美味しいこと。
新潟のなかでも、先生自身が特に美味しいと評価されている栃尾の棚田で造られた或老夫妻の手によるお米であること。
特に驚いたのが、放射線の影響はないという各種検査結果の添付でした。

お米を前に、眼前に越後の稲田の光景が広がってきます。
肌に冷たい大気の匂いが鼻腔の中に広がってきます。

私は、新潟のモノであれば、仮に放射線に曝されていても、喜んで身体の中へ取り込むでしょう。
私の新潟贔屓は筋金入りです!

この岡先生の学生たちへの気遣い、心遣いを折に触れて、
あぁウチの学生たちは、果報者であろうかとしみじみ感じたのです。

で、お米は早速購入したる精米機にて無事に綺麗な綺麗な白い宝石へと姿を変えて、
神様、仏様にお供えしたあとに、
私を幸せな心持ちへと誘ってくれたのは言うまでもありません。