日別アーカイブ: 2016年6月27日

【縁】

医師の御母堂様の治療に着手し始めました。

歯科と医師の間には大きな壁が在ります。

此れは歯科医の勉強不足と認識の甘さに原因が在るのが半分、

残りの半分は、医師が歯科医学の教育を受けていないことに

大きな原因が在ります。

ご子息様としては大切な母上であることから、

さぞかしご心配であろうと察しています。

歯科医学の特性上、

自然科学と工学とに跨がり、

しかも美的問題、

発音など、

様々な特殊性が在ります。

また、人は加齢と共に、

諸器官が老化してゆく定めに在ります。

この様ななか、

人工物が生体と調和し長期間機能してくれるようにと。

ご子息様のお顔を私は存じあげませんが、

大切に手当てさせて頂きたいと思います。

次の患者さんは女医さんです。

御母堂様も医師で、私の患者さんでもあります。

私はこの女医さんと妙にウマが合うのです。

【なんか良いことあった?】が、

彼女の顔を拝見しての最初の台詞です。

非常に利発で勘のよい先生です。

良い臨床医ですが、

もっともっと凄い先生に育つ姿を

長い間、観ていたいと願っています。

私は開業医ですから、

患者さんとの【縁】を大切に思っています。

歯科医の若き後継者たちへ

毎日のように若手の歯医者さんからのメールやお電話を頂きます。

私のような初代は稀で、

三代、四代と続いた歯科医院の後継者の先生方です。

私は初代ですから、

私の前に道はありませんでした。

歯を食い縛って、

歯を噛み締めて、

人生を味わって過ごしています。

苦く、しょっぱく、辛い道です。

が、

精一杯に歯の宇宙空間を泳いで来ました。

後を引き継ぐことの責務を

私は彼らとの会話から知らされました。

大変なのは皆同じなんだな、と。

私は頑張っています。

堪えて堪えて頑張っています。

死ぬまでやり抜きます。

だから、

みんな!頑張れ!

負けるな!

私の意味

来月から和田精密歯研㈱の主宰を始めとした

私の講習会が始まります。

封切りは和田精密発祥の地で在り、私のホームグラウンドでもある

高松市から始まります。

受講の対象者は40歳未満の歯科医師と、

その同伴の歯科衛生士とさせて頂いています。

アチコチからのお申し出に

いいよ!と、

気軽にお引き受けさせて頂いたものの、

実は講演の内容を私は決めかねていたのです。

で、

受講者の先生をご紹介して頂き、

週末に電話にてお伺いをたてたのです。

私と同窓であることから、

話しに華が咲きました。

相手の聞きたい内容に遇わせるのが

講演の成功の秘訣です。

妹ぎみも本学の卒業とのこと。

朝メールが届き、

両君ともに、

数日後にお越しになられる運びとなりました。

若い歯科医に手助けするのは、

私らの職務です。

先週末も、

新宿開業の若い綺麗な女医さんから小包が。

はて?

【先生、私の削った歯の模型の添削をお願いします!】

はい、はい、と。

若い綺麗な女性って得だと思います。

そんなこんなで、

若い歯科医に囲まれて、

私は幸せなのかもしれません。

歯科にお役にたてることが、

私の意味だと思っています。

 

歯の保存

診療所のドアを開いた瞬間に、

私は別の人間に生まれ変わります。

身体全体の皮膚が張り積めるのを意識します。

何時からか覚えていません。

私が歯科医になってから今日まで至った時間は、

もう私には残っていません。

むしろ、その半分の時間も残っていないでしょう。

精一杯に努めよう!

上手になりたい、上手になりたいと、

自己研鑽してきましたが、

今は、

歯を残してあげたい!

ただそれだけを念じて白衣を纏っています。

歯科医の本来の仕事です。

波間にて

出来るだけの精一杯のことをし尽くしたけれども、

真逆の結果なり評価を受けたときには、

自分の力不足であったと、自己評価しよう。

他人のせいにするのは止そう。

マリリンと長い間、

堤防から砂浜越しに海を眺めていました。

瀬戸の凪ぎは割れた硝子の粉のように眩しかった。

引き潮から満ち潮へと変わると、

風の匂いも変化することに気がつきました。

で、

波が

砂浜の上の折れ枝、塵、足跡、

いっさいを隠して消し去った後、

静かな押し波が堤防の真下までに。

リズムある波音が鼓膜に響きます。

マリリンは、

眼に風を受けて瞬きばかり。

空は薄い水色で、

遠くの瀬戸の島々が白く、

私が幼い頃に観た光景と変わってはいません。

変わってゆくモノは、

私のような不器用な人間には

追いかけようもありません。

息子の意見

久し振りに寝つきが悪い夜でした。

診療所が休みであることから、仕事疲れが無いからかもしれません。

息子に電話を入れました。

出来の悪いヤンチャな息子です。

私の悩みの四分の一は、

間違いなくこのヤンチャ坊主が原因です。

が、

気がねなしに話しが出来る唯一の男が

このヤンチャ坊主でもあります。

【父ちゃんは少数派やからな】

そうかもしれない。

【勤め人が大勢で飲んでる酒場は雑音でイライラするやろ】

そうかもしれない。

【飲み屋で嫁さんの悪口言う奴、嫌いやろ】

そうかもしれない。

【飲み屋のネェちゃんもウザいやろ】

そうかもしれない。

【経済や政治の話しも嫌いやろ】

そうかもしれない。

【バラエティ番組もワイドショーも嫌いやろ】

そのとおり。

【本格的でない、いわゆる芸人って嫌いやろ】

そのとおり。

【父ちゃん、それで良いやけど、浮くわな!】

大きなお世話。

【父ちゃん、馬鹿なって遊んだら?】

何をせよと?

趣味を作ろうにも、

私独りの身体ではありません。

趣味を持つことがズッと私は恐かったのです。

本業が【オロソカ】になってはならないからです。

身体の手当てにも時間を要するようになりました。

少しでも倹約して、

皆を大きくしなければならないという、

心に大きな縛りもあります。

歯の仕事に就けたことの幸せだけを

感謝し噛み締めて、

ズット過ごしてきた不器用な人間です。

ヤンチャ坊主の見本であった私が、

自力で自分を太い縄で縛って、

家長の役目を噛み締めて来たんです。

この縄が、

グサッとキレたら、

一番に困るのは身近な家族だからと。

 

 

マリリンと私

犬の朝は早い。

夜明けと共に目覚めるのは

野生の時の名残かもしれません。

で、

一緒に自宅前の公園から近所を散策するのです。

外気は少し肌寒く、パーカーがないと震えるほどの早朝です。

帰り道、何時ものコンビニでコーヒーを。

マリリンは外からガラス越しにズット私から眼を離しません。

コンビニから出ると、

ピョンピョン跳ねて跳ねて!

身体いっぱいで、

喜びを表現します。

で、

再び、

一緒に家路に就きます。

眠る時から、テーブルに付いている時さえも、

私の身体の何処かに、

自分の身体を触れさせています。

元来、寂しがり屋の私ですから、

今は同じ甘ったれのマリリンに菅って助けられてと云った処でしょうか。

私はマリリンに頻繁に語りかけます。

たワイもない話しばかりです。

仕事以外では、

私は独りでいることを心がけるようになりました。

変わり者と想われるのが恐いからです。

私のように1つのモノを追求して過ごしてきた人は、

皆、同じような台詞を言っていたように思います。

始終、歯のことが頭から離れないのを、

他人眼では不審に見えるのかもしれません。

工夫に工夫を重ねるって作業は、

さぁ!と始めるものではありません。

それこそ常日頃、寝ても覚めても。

ヒントの種子から

ひょんな事から発芽する事を経験済みだからです。

そんな私と、

丁度良い【間】を保ってくれるのが上手なマリリンです。

今日からまた1週間が始まります。

患者さんの診察と治療は、

大袈裟に聞こえるかもしれませんが、

私の命をかけた戦いです。

神経は張り詰め、

手先から掌、腕、そして肩から足腰は、

仕事を終える頃には、

痺れと痛みで、

私は苦しみます。

額の皮が突っ張るほど、

両の眼をカッと、

見開いて1日を過ごすからでしょう。

それでも私は【歯の仕事】に就けて幸運であったと思います。

さぁ、マリリン帰ろう!と、

一緒に車に向かう日が始まりました。