日別アーカイブ: 2016年10月17日

入れ歯というもの

いつまでも若い気持ちでいるのを他所に、

私も既に53歳という初老の域に達してきました。

あっという間に、

私も高齢者という扱いを受ける日が来るに違いありません。

生涯現役が私の信条ですが、

それなら、

精密仕事が出来なくなる日が来ることは確実です。

細かな手仕事や手術から身を引く日が来るという現実を鑑み、

将来の自分の役割を念頭に、

入れ歯造りの修行を行う私です。

入れ歯造りほど、

【奥の深い】治療はありません。

通常、歯の治療は【眼】で視て、

指先を心のままに微調整して成り立つのですが、

入れ歯造りは、

指先の腹の柔らかい皮膚が、

通常の治療で云う処の眼の役割を果すということに

最近、気づくようになりました。

入れ歯は、柔らかい粘膜の上に乗っかり、

唇の裏側の粘膜や頬の粘膜、

動き廻る筋肉の塊からなる舌、

唾を飲み込む度に持ち上がる口底粘膜に

囲まれている性格柄、

動く粘膜の形を想像しつつ、

入れ歯を触って触って、

造りあげて行く喜びがあります。

歯科技工士に委ねず、

秘かに秘かに、

針金を曲げて、

一見シンプルに見える入れ歯の中に

私の今の歯科に関する全ての知識と技術を注いでいます。

恐らく20年ほど経つと、

入れ歯のほんの一角が解るようになるかもしれません。

歯の中の警察官

舶来への憧れ?

自国コンプレックスのなせる技?

特に歯科医学においては、

その傾向が強いように思われます。

確かに機械については、

まだまだドイツには追いついていないと感じますが。

ただ何でもかんでもアメリカが進んでいると思うのは、

大きな勘違いだと思います。

歯を残す治療においては、

日本の方が真摯に向き合っているように思えてなりません。

歯内治療などが顕著だと感じて、

アメリカ人の歯内治療専門医の動向を眺めています。

根管治療においては、

根の先までキチンと根管充填されていることは

基本のきですが、

先まで行きゃ良いという単純なモノではありません。

その辺を何処かに置いて来たンじゃないか?と、

思わせられる最近のアメリカの歯内治療です。

私がルーチンに使うのは、

ジッペラーのリーマー、Kファイルですが、

それも15番までです。

1番クドクまで使うのは08番で、

治療の大半は

東京都麹町開業の岡口守男先生御考案のマイクロエキスカを、

で、

自作のマイクロエキスカも最近では登場し、

根管の中を隈無く、

パトロールする警官になって奮闘しています。

仕事が終わったら、

もう眼が疲れで充血しているのが判ります。

それでも、

歯の中の治安のためにと云った処でしょうか?

 

私の持病

休み明けの1番の仕事は、

インプラントの埋入手術から始まりました。

根が折れて放置していたことで、

骨の吸収が著明です。

粘膜で覆い被さっているので、

患者さん自身に、その自覚はありません。

インプラントの埋入手術と併用して、

骨の形を整えるために、

骨補填材を使って骨造成の手術も必要です。

同じ患者さんの身体であっても、

部位によって骨の質は異なるのです。

人体の不思議のなせる技です。

毎回、毎回、新鮮な気持ち、謙虚な心で、

丁寧仕事をと心がけています。

どれ程の数のインプラントを埋入したの判りません。

が、

患者さんを前にメスを持つ時の緊張感は、

今でも同じです。

進歩がないのか?

ヤタラ自信満々の歯科医のコメントを時に目に触れる機会があります。

これは性格からなのか、

無知の副産物からなのか、

それでも、

羨ましいと、あやかりたいと思うのです。

心配症は、

恐らく生涯の治りそうにない私の持病です。