日別アーカイブ: 2017年3月21日

素晴らしい仕事、歯科治療

日本歯科大学の1年生への特別講義をお引き受けして、

早いもので10年目になります。

既に歯科医師となった大学院生への指導なり、

専門過程の学生さんへの講義であれば、

ソレナリに上手く導く自負はあるのですが。

1年生と言えば、

高校生に毛が生えた程度だと思いますので、

コチラも、

ソレナリに覚悟して話しをしなければなりません。

専門職としての自覚を促すことを目的とする

【プロフェッション】と云うカリキュラムが、

今の歯科大学には在ると云うことで、

私の日常について、

よもやま話し?漫談?をしています。

今年は思う処あり、

スライドを大幅に変えての話しをと考えています。

良い歯医者になって欲しいと云う後輩たちへの想いは変わりありませんが。

10年も経てば、

若者の気質も大きく変わって来ているでしょう。

ですから、

手法を変えて、

三枝節は其のままで、

素晴らしい仕事、歯科治療について大いに語ろうと考えています。

前輪と後輪

自動車では、

前輪と後輪の調和が必要であるように、

私の仕事においても、

確かに、

前輪と後輪が在るように思います。

若い時分から良い歯医者になることが私の夢でした。

この良い歯医者について、

やっと最近になっておぼろげながら、

観えてきたように思います。

私個人として、

宮大工や刀鍛冶のように、

技を研く、

それが前輪のようなモノだと考えています。

で、

後輪は?

それは決して特別な技量を必要とはしないで済む、

歯科医師なら誰しも出来る手法にて、

患者さんに喜んで貰える手当てを見つけることだと、

そう思ってきたのです。

私はこの2年近く、

深い進行した虫歯であっても

神経を採らない治療を実践しています。

その手当てに、

特別な技量は必要としません。

そういう治療方法にての社会貢献が私の後輪だと考えています。

とは言ったものの、

今しがた総入れ歯をお造りして

14年は経過した患者さんから、

先生からトンカツは噛めるように総入れ歯を造りますと言われたけれど、

スジ肉、シワシワの沢庵も大丈夫!

と言われた際に、

あぁ技量の向上に更に努めようと、

決意新たにしたのです。

 

歯と日本刀

日本刀と聞けば、

誰しも、その形くらいは想像できると思います。

今時は、

日本刀など、

そんなに関心ない工芸品程度のモノかもしれません。

あるいは、

そんな武器など危険極まりないと、

敬遠されるかもしれません。

が、

私は日本刀に魅了される者です。

ただし、

私が美しいと感じる日本刀は、

あまりにも高価過ぎて、

手に入る代物ではありませんから、

あくまでも、

博物館や写真での、

眺めての高値の華的存在ではありますが。

日本刀は鋼( はがね  ) でできています。

この鋼は、元来は鉄です。

刀鍛冶は、

鉄を火に入れ、

赤く燃えた鉄の塊を叩いて叩いて、

その繰り返しから、

刀を造ります。

刀鍛冶から叩かれることで、

鉄は鋼へと質的変化を起こします。

叩かれることで、

鉄のなかの不純物が除去され、

プュアな鋼へと変化するのです。

通常、金属は加工される過程において、

液体にまで溶解されるのが常ですが、

日本刀だけが、

液体に溶解されることのない、

普遍ではない過程を踏まれます。

その結果、

あの鍛え上げられた金属結晶の変化が生じるのです。

この刀鍛冶の技の結晶は、

21世紀の進歩したテクノロジーにて調整された

コンピューター制御の炉でさえも、

決して造ることが出来ません。

人の経験からくる技の真骨頂が刀鋼だと思います。

刀鍛冶は、

火に入れた鉄が、

太陽の紅に似せて焼き入れるのだそうです。

古来、太陽は神さまです。

其れを尊ぶゆえに、

鍛冶場には、

しめ縄が観られるのです。

また、

古来、刀には神さまが宿るとも言われています。

私も、そう信じています。

私は歯に、

日本刀を重ねて観ています。

刀鍛冶が鋼の声を聞くように、

私も歯の声が確かに聞こえるからです。