赤玉


実業家の父上の会社にて海外赴任のバリバリのキャリアの〇〇さんも、

既に30も半ばになったとのこと。

お嬢ちゃん時代からの患者さんですから、

私からしてみれば、何時まで経っても

当時のままの積もりです。

〇〇さんも私のことを、親戚のオジチャンみたいに思って居られるのでしょう。

で、最近になってようやく結婚と云うモノを考え始めた様子。

ー   でも先生、遊ぶ人は絶対に嫌だけど、男の人って何時まで経ってもでしょ?  ー

俺に聞くなよ!と思いつつ、

チョッとカラカッテやろう!と、

いたずらっ子の私は、

ー  其れは違う!勘違い! ー

と。

ー  人間には限界ってモンがあってな! ー

ー  えー!本当ですか? ー

ー  そうだよ、一生で決まってるンや!決まった数に至ったら、

赤玉がポトンって出るンやで! ー

ー    知らんかった!  ー

内心で、

そんな事がある筈ないだろ!と、

吹き出しそうになりながら、

眉間に皺で、

もっともらしく。

歯型を採る際にも、

まだまだ何かを聞きたげな〇〇さんでした。