親たる者の責務


 男子厨房に入るべからずと云う
言葉が在るが、
此れは大いなる誤りである。

 私は、
倅とも、
小さな娘達と共に
料理をするのが
楽しみである。

 又、
料理には
手際が大切である。

 此の辺りを
子達に見せるのは
大切な事であると思っている。

 料理をする上で
最も肝心な処は
器撰びと
盛りつけにあると
云って良い。

 目で違和感ある
器と盛りつけに接した時に
その人の
生き様が
推し測られる。

 倅が、
特に娘達が
成人した際に
恥をかくのは
親たる私が
恥をかくのと
同じである。

 一輪の花の活けようにも
其の活ける人の心が映るのと
同じく
料理の盛りつけ様にも
其の人の
生まれと育ちが
映えるのである。

 食材に見いる幼い娘達の瞳の輝き様に
親たる者の責務を感じ
長箸を
動かす私である。

 焼いた松茸の盛りつけの
基本処を
今夜、
娘達と
楽しもうと思っている。