種を撒く話し


ついこの間、

日本歯科大学の藤井学部長から、

心に残る言葉を頂きました。

私には、

個人的には意見が全く異なっていても、

この人の指示であれば、

自分の想いを封じてでも、

素直に従い、

ひたすら務める。

そんな希少な人物が

この世に二人居ます。

一人が師匠である内藤正裕先生であり、

もうお一方が、

この藤井学部長です。

藤井先生が未だ母校の講師時代からのお付き合いです。

先生は私よりも学年は1年年少です。

本来であれば、

先輩の私の方が偉そうにできるのですが、

先生の物事を観る視点に

ある種の驚きを覚えたのです。

私には無い物差しをお持ちです。

ですから、

やはりスピードご出世なさいました。

で、

先生から頂いた言葉と云うのは、

三枝先生、観せるご自分をお考えになられる時期かと。

???

三枝先生、あなたほど歯の好きな人は珍しい。

好きな歯で飯が食えるあなたは幸せな人。

多くの歯科医師を送り出してきた私ですが、

あなたのように歯で楽しむ人を知りません。

ただ、

もうそれはそうと、

良い意味での大人になって下さい。

学生も若い歯科医師も、

そんなあなたが羨ましく、

何故そんなに、

ノビノビできる?

みんながあなたを観ています。

良い歯科医師を創りたい。

その想いと職責を

私は背負っています。

何故なら、

日本歯科大学の学部長になってしまったからです。

他の大学なら、

そんなこと考えなくても良いんです。

自分ちの国家試験の合格率だけ

考えておれば良いんですよ。

ですから、

苦しいですよ。

自分の悪口をしばしば耳にします。

それでも、

平然としているのも、

私の職責が在るからなんです。

私がプロの歯科医師を教育する臨床教授の仕事を

決意してお引き受けしたのは、

藤井先生の下で、

一緒に汗を流したいと思ったからです。

子供からしばしば言われる台詞が、

パパは身体が大人で心は子供。

先日、

息子との雑談の中で、

何気無く息子が言った台詞。

父ちゃんはある面、

アダルトチルドレンやな。

そうだと思います。

色々と自分で思う処が大いに在るからこそ、

私はカトリックの洗礼を受ける決意をしたのです。

大学院で博士号を取得して、

当時の私の置かれた状況では、

自分で申し上げるのもなんですが、

私はエリートコースにいました。

が、

私は指導教授を張り飛ばして、

これは今でも学内の語り草になっています。

私は大学を飛び出したのです。

母校とは無縁と云うよりは、

干された20年を過ごしていました。

田舎街高松市で、

コツコツと、

良い歯科医師でありたいと、

誠実に歯の仕事に向き合っていたのは

間違いありません。

自分なりの歯の理想郷を私の診療所に創ること。

それで私の生涯は終わるのだと。

そんな私を引っ張り出したのが、

この藤井先生です。

10年の間、

次々と、

先生は私にアレコレと注文をつけてこられます。

私はノセラレたんですね。

藤井先生の魅力に。

三枝先生、入学してうちの学生は先ずあなたの講義を聞かされます。

今時の若者にとって、

あなたを見せるのは一種のショック療法なんです。

で、

4年の時に、

保存学であなたに再会する訳です。

今学内の人間で、

あなたの仕事を知らない人はいませんよ。

もう準備が整ったようです。

附属病院で、

あなたの仕事の実際を観せてやって下さい。

どのような診断をするのか。

そのために、

どのような検査を行うのか。

どうして、

そのような治療方法を選択したのか。

患者とどのように接するのか。

この10年の間、

知らないうちに、

私は藤井先生から育てられていたようです。

藤井先生からの言葉を

重く受けとめ1つの結論に至りました。

決して権威を降りかざすことなく、

奉仕の精神の医療を行う教授であろう。

奉仕の心の種を丁寧に育てよう。

その良い種が、

全国各地で、

良い歯科医師となって芽がでるように。

新約聖書の中の、

種を撒く話しを

藤井先生と重ねて読んだのです。